便秘
便秘は女性が多く訴える症状のひとつ。なかでも多いのは次の2タイプです。
1.痙攣(けいれん)性便秘=ストレスなどが原因で腸が痙攣性の収縮運動をするため、腸の内容物が正常に運ばれなくなり便秘に。コロコロとしたウサギのフンのような便が特徴。 2.弛緩(しかん)性便秘=運動不足や食物繊維をとらない生活をしているため、大腸全体の動きが悪くなる。太くて固い便の場合が多い。 どちらの便秘もまず、食事や運動などの生活習慣を改善することが基本です。
漢方で便秘に対処する
漢方の見方では、便秘は「気・血・水(き・けつ・すい)」のなかの「水」の不足、ストレスや緊張による「気」の異常、「血」の異常である「お血」などによって起こると考えられています。便秘以外の症状がない場合は、西洋医学的な「下剤」のような利用の仕方、つまり症状があるときだけ一時的に使うことが多く、便秘以外の症状を伴うときは、体質改善を行いつつ、お通じの状態を整えるという使い方をしていきます。
便秘でもっともよく用いられる漢方薬は、大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)です。「漢方」という名前が付いた市販の便秘薬のほとんどに、この漢方薬に配合されている生薬が含まれています。市販されているのだから誰にも使えると思われがちですが、実は漢方でいう「中間証〜実証」、体力がある人向けの薬です。体力があまりない人には桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)が用いられます。 このほか、ウサギのフンのようにコロコロした便は「水」の不足で起こると考えられることから、潤いを与える麻子仁丸(ましにんがん)・潤腸湯(じゅんちょうとう)がよい、というように便の特徴から、処方を決めることもあります。 大黄甘草湯、桂枝加芍薬大黄湯、麻子仁丸、潤腸湯には、大黄や麻子仁といった下剤作用が含まれる生薬が入っているので、飲んだら比較的すぐに作用が現れますが、反面、市販の下剤ほどではないものの下痢になったり、胃腸が痛くなったりする場合があります。その場合は、下剤作用のある生薬を含まない桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)を使って、便秘を解消していくこともあります。この2つの処方は腸の動きを調整する働きがあることから、便秘と下痢を繰り返すような症状の人にも向いている漢方薬です。大黄甘草湯などのような直接的な作用はありませんが、しばらく飲み続けることで、腸の動きを回復させて、安定したお通じをつけることが可能です。
さらに、お血症状が強い人の便秘で肩こりや腹部の張りがある場合は大柴胡湯(だいさいことう)、月経不順など月経の不調を伴う場合は桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などが使われますし、イライラや不眠など気の異常がある人の便秘には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)がよく用いられます。
あなたの便秘はどのタイプ?
漢方では、「便秘なら○○」といった考えはありません。その人の体質にあわせて、治療方法を考えるのです。便秘の症状は様々ですが、大きく分けて下記の5つに分類できますので、自分がどのタイプに当てはまるか、チェックしてみてくださいね。
■熱タイプ
脂っこいものやお酒は、余計な「熱」を生みやすいです ⇒腸内の老廃物が、熱と結合して起こる 【特徴】 味の濃いもの、辛いものが好き 口が渇きやすく、よく水を飲みたがる 便はコロコロと乾燥していたり、尿は濃い黄色 舌の色が赤かったり、黄色い苔がついている
■気滞タイプ ⇒ストレスなどで気が張っていたり、滞っている 【特徴】 些細なことでくよくよしたり、環境の変化に弱い 生理前に体調が悪くなることが多い 胸脇が張ったような感覚がある ゲップやオナラが出やすい
■気虚タイプ
年中だるい、風邪を引きやすいといった症状も、気虚タイプの特徴の一つ ⇒便は乾燥せず、栄養・体力不足が原因 【特徴】 顔色や舌の色が白っぽい 疲れやすかったり、体力があまりない 排便しても、なんだかすっきりしないことが多い 無理なダイエットをした、もしくはダイエット中
■血虚タイプ ⇒血液や水分不足のため、腸を潤せない 【特徴】 顔色や髪にツヤがない、爪が割れやすい 便はコロコロと乾燥している めまいや立ちくらみなどをよくしやすい 生理後や出産後である
■寒タイプ ⇒身体を温める機能が低下しているタイプ 【特徴】 生ものや、冷たいものが好き 手足やお腹が冷えている、寒がり 尿量が多かったり、トイレが近い 舌には白い苔がついている
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