アメリカでは、不良品のことをスラングで“レモン”と呼ぶ。これに伴って「レモンを渡されたらレモネードを作れ」という諺がある。「大変な時でもその状況を前向きに活かすべし」、というアドバイスだ。 雪かきする恐竜が出現!?先日、アメリカの東半分で広範囲に渡り大雪と強風の大荒れ天気となった。翌朝、人の背より高く積もった豪雪にウンザリしている市民の様子がニュースになったが、かたやFacebookをはじめとするソーシャルメディアの世界では、ケンタッキー州のとある男性がT-Rex(=恐竜ティラノサウルスの愛称)のかぶり物を着て軽やかに雪かきをする様子が映っているコッケイな動画が世界中のユーザー間で大評判となった。この話しを聞いたときに「レモネード」の諺を思い出したのである。 メディアに取り上げられてヒーローに前向き精神と笑いのパワーと言うのはすごいもので、この動画のヒット数はあっという間に増幅して1日もたたぬうちに100万件ヒットを記録することになったのである。このニュースは「タイム」誌の電子版でも取り上げられ、「雪かきT-Rex」ことクリフ・ホワイトさん(39)は一躍ヒーローとなった。「どうせ大雪で仕事にも行けないから楽しもうと思って……」と、ハロウィンで着た恐竜のかぶり物を引っ張り出して来て、雪かきをはじめたところを奥さんがビデオに撮り、Facebookにアップしたのが事の発端となったらしい。 日本の真面目さは身体に悪いアメリカにいると「日本人は物事にシリアスになりすぎる」という言葉をよく聞く。この「真面目さ」は、日本人の美徳でもあるのだがヘタをするとかなり身体に悪い。アメリカ人は、緊迫した時でもユーモアを交えることでその場の雰囲気を和らげる術に長けている。今回の雪かき恐竜を例にとっても、「大変だけど、どうせなら楽しんじゃえ!」という、レモンを渡されたらレモネードを作れの精神が、世界中にたくさんの笑顔を提供することになった。 「どうせなら楽しもう」精神嫌なことがあったら、文句を言って不愉快な気持ちに陥るのはいたって簡単だ。クリフさんだって、豪雪を目の前にして「雪かきうぜぇなあ…」とブツブツ不機嫌に対処することも出来たはず。ただそこで文句言ったところで雪がなくなるわけではない。そこでクリフさんは奥さんと共に、「どうせならそんな状況を楽しもう!」と気分を切り替えた。これがミソである。 以前どこかで、「人間の思考回路における初期設定は「ネガティブ」である」という記事を読んだことがある。だがレモネードの諺と「雪かきT-Rex」を胸に、初期設定をカスタム設定「ポジティブ」に変えることができれば、人生グッと楽になるのではないか。人間の素晴らしいところは、心がけ次第で不機嫌な人間から世界中の人に笑みをもたらすティラノサウルスにもなれるということである。
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