「傷は消毒して乾かして治す」は長い間常識として信じられてきました。少なくとも私が幼いときは転んだら消毒液をシュッシュされ、悶絶しながら痛みに耐えていた覚えがあります。その後は手団扇で傷を乾かし、ガーゼで覆い、かさぶたになるのを待つ。一般家庭ではそのような治療法が主流だったのではないでしょうか。 10年ほど前、常識だと思われていたこのことが大きく覆されたことは医療界でも話題となり、それから月日が経った今、「傷は消毒しないで水道水でよく洗い、乾かさずに治す」が新常識となったはずでしたが、未だ多くの方々がこのことを知らずに、以前の治療法を行っているようです。 傷は消毒しないで水道水でよく洗い流す!消毒液は殺菌作用と同時に良い細胞にもダメージを与えるため、傷を治すのではなく逆に傷口を深くしてしまいます。ですから、傷口には消毒液は使わず水道水でよく洗い流すのが大切なのです。砂等の異物が傷口に入った場合、骨が見えてしまうような深い傷の場合等、病院を受診するべきケースは沢山あるので迷ったらすぐに病院に行って下さい。 ガーゼはあてない、乾かさない!様々な細胞が傷を治す為に傷口に集まってきて働き始めます。傷がジュクジュクし始めたときは「浸出液」というものが出ていて、これには傷を治す為に必要な成分が沢山含まれています。この液体を膿だと勘違いする人もいるかもしれませんが、膿が出ている場合は「腫れ、痛み、赤み、熱感」等の感染兆候が出てくるので区別できます。 また、ガーゼを当てるとこの「浸出液」がガーゼに吸い取られて傷口が乾燥してしまいます。そしてガーゼは傷口にくっついてしまうので、ガーゼをはがす時にせっかく出来た表皮細胞も一緒にはがれてしまいます。ですから、ガーゼは傷口に当てません。 以上の治療法は、けがや病気をした時に人間が本来持っている「自己治癒能力」を生かす方法で、「湿潤療法」と言います。 ラップフィルムや湿潤療法用の絆創膏を当てる軽い火傷や擦り傷を自宅で治療する時も同様で、水でよく洗い、白色ワセリンを塗ったラップフィルムを当てたり、薬局等で売っている防水の湿潤療法用の絆創膏を貼ったりします。普通の絆創膏はガーゼと同じなので使いません。ご自宅で治療される方は適宜、絆創膏を変え、上に挙げた感染兆候に十分注意して下さい。少しでも不安がある場合は必ず病院を受診するようにして下さいね! |