そろそろお盆休み。海外旅行を計画している方、「病気に対する備え」はどうですか? 「アフリカに行くなら必要かもしれないけど、それ以外は平気でしょ?」と考えているあなたは甘い! 実はアフリカ以外にも、女子の間で人気の東南アジア、リオ・オリンピックで注目が集まる南米でも注意が必要な病気はいくつもあります。今回は救命救急、旅行医学がご専門の中島侑子(なかじま・ゆうこ)先生に「海外旅行に行くなら知っておきたい病気の基礎知識」を聞きました。 中島先生によると、海外旅行先で気をつけたい病気は、「感染経路」によって以下の4つに分かれるそう。 水や食べ物から感染する病気これに当てはまるのは、旅行者下痢症、腸チフス、赤痢、コレラ、A型・E型肝炎など。海外旅行者がかかる病気の中でもっとも多いのが旅行者下痢症です。約1ヵ月海外に滞在する場合、半数以上が旅行者下痢症にかかるという報告もあるほど。その病原体は細菌、寄生虫、ウイルスですが、多くは水や食べ物から感染します。 特別な治療をしなくても数日で軽快する場合がほとんどですが、なかには重症化するケースも。例えばアメーバ赤痢の典型的な例ではイチゴゼリー状の粘血便や腹痛が見られます。発熱を伴う場合もあり、下痢以外の症状も出ている時は病院を受診しましょう。 A型肝炎や腸チフスのように下痢が主症状ではない病気もあります。A型肝炎は発熱や全身のだるさなどの、風邪のような症状、黄疸(目や皮膚が黄色くなる)などが見られます。腸チフスは風邪のような症状の他、皮膚にピンク色の発疹などが見られます。 対策としては、生水、生肉は避け、外出後は手洗いうがいを徹底しましょう。また、下痢が続くからと言って水分を控えるのはよくありません。脱水を予防するために水分はしっかりとること。また、発熱や腹痛、血便がある場合は自分で判断せずに現地の病院に行きましょう。 蚊から感染する病気マラリア、デング熱、黄熱、ジカ熱などがこれに当たります。やはり一番怖いのはマラリア。マラリアには4種類(熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリア)ありますが、なかでも、熱帯熱マラリアは治療しないと重症化し死に至ります。 もっとも多い症状は悪寒と発熱で、発熱期と無熱期を繰り返すのが特徴です。その間隔はマラリアの種類により異なり、三日熱と卵形で48時間、四日熱で72時間です。熱帯熱では36〜48時間(または不規則)となります。マラリアの種類は血液中の原虫を顕微鏡で見ないとわからないので、流行地域で発熱した場合、すみやかに病院に行ってください。 また、直接死につながることは滅多にありませんが、ジカ熱も要注意。ジカ熱は妊娠中の女性がかかると子どもに先天性障害が起きる可能性があります。実際にジカ熱流行後のブラジルでは子どもの小頭症が問題となっています。 動物、ケガから感染する病気これに分類されるのは、狂犬病、エボラ出血熱、破傷風、住血吸虫症など。動物、ケガから感染する病気は比較的珍しいですが、罹ると死につながる可能性が非常に高いため要注意(特に狂犬病は発症するとほぼ100%死に至ります)。 哺乳動物に噛まれた時、引っ掻かれた時は一刻も早く病院に行ってください。よく、「狂犬病の予防接種をしているから大丈夫」という人がいますが、噛まれた場合は予防接種をしている人でも追加でワクチン接種が必要です。また、被害として意外に多いのがコウモリ。南米でハンモックで寝ていたらコウモリに噛まれたという友人もいたのでご注意を。 少し前まで西アフリカを中心に流行していたエボラ出血熱ですが、これも動物から感染するウイルスです。住血吸虫症は馴染みがありませんが、住血吸虫の幼虫が含まれる水に触れることによって感染します。汚染された川や湖で泳いだり、カヌー、ラフティング、ダイビングをしたりしていて感染します(海水にはいません)。発熱、頭痛、筋肉痛といった症状が見られ、診断されたら虫を駆除する薬で治します。 人から感染する病気B型肝炎、HIV、麻疹、風疹、結核、髄膜炎菌、SARSなどが、このタイプ。人から感染する病気には、医療行為や性行為で感染するB型肝炎、HIVなどの他、人の咳や唾液に含まれる病原体が空気中に飛び、それから感染する麻疹や風疹、SARSなどがあります。 医療従事者は基本的にB型肝炎ワクチンを接種していますが、それ以外の方で接種している人は稀かもしれません。B型肝炎もHIVも医療行為や性行為に気をつけることで防げます。海外の病院で血液検査や点滴をする際は、新品の針が使われているか注意しましょう。性行為の際は必ずコンドームをつけましょう。 麻疹、風疹はワクチンがあります。特に風疹は妊娠中の女性が罹ると子どもに先天性障害が起きる可能性があります。男女ともにワクチン接種をおすすめします。 旅行前にやっておきたい対策1:現地ではやっている病気を調べる 厚生労働省のFORTHというサイトで調べられます。 2:予防接種を受けておく 受けるかどうか検討したい予防接種は、黄熱病、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、麻疹、風疹です。予防接種によっては数回接種が必要なものもあるので、余裕をもって計画しましょう。詳細は病院の渡航外来やトラベルクリニックで相談してください。 3:持参薬を準備する 私が海外旅行に持参する薬は、下痢止め、酔い止め、解熱鎮痛薬、高山病対策の薬です。最低限、これだけあれば現地で病院に行くまでの間は対応できます。 4:蚊の対策をする できるだけ肌を露出しない服装、蚊よけグッズを持参すること。蚊よけスプレーはDEETという成分が多く含まれているものがおすすめです。日本では10%程度のものしかありませんが、海外では数十%程度のものも。あまりDEETが多すぎると皮膚に負担がかかるので、肌が弱い方は事前に医師にご相談ください。 5:現地の水事情を知る 現地の水道水が飲めるかどうか事前に調べておくこと。もしくは、海外旅行中はミネラルウォーターしか飲まないと徹底するのもよいでしょう。また、屋台やレストランの氷は水道水が使われている場合も多いので要注意です。 |