浜の真砂は尽きるとも、嫁イビリの種は尽きまじ……と考えたくなるほど、いつも時代も嫁姑の軋轢は絶えません。生命情報学がご専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生によると、嫁姑問題には隔世遺伝が関係しているかもとのこと。一体どういうことなのでしょうか? 嫁姑問題の原因は実は遺伝子だった!?チクチクと嫌味を言う姑と、反発する嫁。そして両者の間で板挟みにされる夫……などという話は、国も時代も超えて枚挙に暇がありません。嫁姑のトラブルが話題に上ると、男性は「これだから女はインケンだね〜」なんてコメントしたりしますが、果たして嫁姑問題は相性や女同士の確執が理由なのでしょうか? 実は、一触即発の嫁姑問題でも、遺伝子が鍵となっている可能性があるんです。 その根拠は、ズバリ「隔世遺伝」。 眠っていた遺伝子が孫の代で覚醒する?「隔世遺伝」といえば、祖父母から孫に直接受け継がれる遺伝、というのが一般的なイメージではないでしょうか。しかし、遺伝学の見方ではちょっと違うんです。父母の代では強い形質に押されて表に出てこなかった形質が、染色体同士の掛け合わせによって強くなり、孫の代で現れてくる。つまり、祖父母の代から遺伝子としては脈々とつながっていて、眠り続けていたものが孫の代で覚醒するイメージですね。 しかし、何でもかんでも隔世遺伝するわけではありません。特に隔世遺伝への影響が大きいのは、全部で23対ある人間の染色体の中に1対だけある性染色体。昔、生物の授業で習ったX遺伝子とY遺伝子のことですね。他の22対の染色体はどんどんミックスされて混ざり合っていきますが、この性染色体だけは完全な形で受け継がれやすいんです。そして、ここに嫁姑問題の一つの原因があるのではないかと考えています。 孫が男の子の場合、嫁姑関係は悪化するかも祖父母、父母、孫それぞれについて、性染色体の遺伝の仕方を図にするとこんなふうになります。 ここから読み取れる内容として重要なのは、次の3つ。 ・孫が男の子の時、父方の祖父母の性染色体は祖父からしか来ない ・孫が女の子の時、父方の祖父母の性染色体は祖母からしか来ない ・母方については、孫の性別に関係なく一定の確率で祖父母の性染色体が来る つまり、孫が女の子の場合、父方の祖父の性染色体は100%受け継がれないんです。逆に孫が男の子の場合、父方の祖母の性染色体は100%受け継がれません。他にもいろいろと複雑な遺伝上の事情はあるとはいえ、孫に男の子が生まれた場合、お姑さんにとっては手塩にかけて育てた息子を嫁に奪われるだけでなく、自分の性染色体が微塵も孫に受け継がれないという状況になります。 これは実に面白くない状況ですから、お姑さんとしては敵意をお嫁さんに向けたくなるのも無理のない話かもしれません。一昔前は、世継ぎとなる男の子が生まれるかどうかが一家にとって重大な関心事。男子誕生ともなれば、お嫁さんの地位が一気に上昇したので、姑としては余計に面白くない状況だったでしょう。 反対に、女の子の場合、お姑さんの性染色体がきっちり孫に入り込んできますから、男の子の時に比べて、不思議な安心感を得られるのではないかと推測されます。こんなふうに隔世遺伝から考えていくと、孫は女の子の方が嫁姑関係は穏やかなものになる可能性が高そうですね。 夫が将来ハゲるかどうかは◯◯を見ればわかる他に、隔世遺伝するものといえば「ハゲ」ですね。ハゲの男性はよく「俺の親父はハゲじゃないから大丈夫」と言いますよね。でも、それはまったくの間違いで、母方の祖父のハゲ具合によって運命が決まります。 なぜなら、「薄毛遺伝子」と呼ばれている遺伝子はX染色体上に乗っているので、色盲や血友病と同様に、伴性遺伝の一種にあたるんです。ですから、彼氏や夫が将来ハゲるかどうかは、母方のおじいちゃんの写真を見せてもらえば一目瞭然なんですよ(笑)。 女性の場合は、X染色体がもう一つあるので、たとえ「薄毛遺伝子」を持っていたとしても形質として現れにくくなりますし、女性ホルモンであるエストロゲンが髪の伸びを促進するので、そもそもハゲになりにくいんです。女性はX染色体を二つ持つことで、保険をかけているんですね。 |