一日のデスクワークが終わる頃には下腹部が重だるい――おしりに生じるなんとも言い難い不快感。今年で30歳になる筆者も、思い返せば脚を組むクセがあったり、ヒールを履いたりと、日常の中で骨盤やおしりに負担をかけることばかりしていると気づきました。 そこで、手軽にケアできるものがないかとたどり着いたのが、パナソニックの「骨盤おしりリフレ」。ベルトを巻きつけると12個のエアバッグが膨らみ、骨盤まわり、おしり、太ももをマッサージしてくれるというもの。 昨年の10月に発売されると2ヵ月で5万台を売り上げ、今年の5月には新たにブラックカラーも登場。話題を集めていますが、凝り固まったおしりまわりは本当に改善されるのでしょうか? 「ながら使い」できるのが高得点ということで、実際に「骨盤おしりリフレ」を使ってみました! ベルト式になっているので、腰に巻いてボタンを押すだけ。マッサージ中は横になってスマホをいじったり、立って食器を洗ったりしていましたが、まったく問題なし。「ながら使い」ができるのは忙しい大人女子には嬉しいポイント。 「マッサージ機は痛い」というイメージがあったのですが、全方位360度から締めつける圧の強さはほどよく、揉みほぐしの時はエステティシャンの手技を体感しているよう。一部位につき1日10分とのことなので、思わず「骨盤しめつけ」「おしり引きあげ」「太もももみほぐし」とすべての部位を試してみました。 使用後にはおしりまわりの血流がよくなって、ぽかぽか温かく軽く感じます。この絶妙なマッサージは一体どうやって実現されているの? 気になったので、パナソニックでマーケティングを担当している山下恵(やました・めぐみ)さん、商品企画課の川治久邦(かわじ・ひさくに)さん、設計チームの児島猛(こじま・たけし)さんに話を聞いてみました。 女性特有の骨盤や下半身の悩みを解決したい――「骨盤やおしりまわり」に注目したマッサージ機って、これまでなかったような気がします。 川治久邦さん(以下、川治):女性が骨盤まわりに漠然とした悩みがあることはわかっていたので、常に新しい商品を作れないか考えていました。具体的に調べていくと、生理の時に感じる下半身の重だるさや出産を機に感じる骨盤の開きなど、女性の身体特有のいくつかの要因が複雑に絡み合っていることが分かりました。 ――全身の不調の原因が骨盤まわりにあると……。 川治:特に30代、40代で出産経験がある方は、不調を訴える方がたくさんいて、腰痛の方も結構いたりして、皆さんなんとなく骨盤のゆがみが原因ではないかと言うんです。 専門家に相談すると、これは骨盤自体の問題ではなく、周辺の筋肉の問題。女性は男性と比べて筋肉量が少なく、出産時には骨盤まわりの筋肉にも大きな負担がかかり、加齢と共にそれが凝り固まり、血行も低下しやすい。 それならば、骨盤とおしりまわりをバランスよくほぐし、血行をよくすればよいのでは?と考えたんです。 そこで、すでに発売していた脚をケアする「レッグリフレ」や肩のコリをほぐす「おうちリフレ」の続編として、「骨盤おしりリフレ」を企画することにしました。 川治:でも、どんな形にすればいいのかわからなくて、まずは既存のマッサージチェアにエアバッグを埋め込んでみたら、「そんなに大きなものは要らない」という声が出て、じゃあ、身体に巻きつけてみようと。結局ベルト型で360度からおしりまわりを刺激する設計にしたんです。 埋め込むベルトは必要最低限の2本に川治:とはいえ、ベルト型に辿りついてからも、試行錯誤の連続でしたね。 最初の問題は、どこまでの範囲を刺激すべきか見極めることで、ベルトを何本にするかという点。当初は、「腰」「腰からおなか」「おしりの上」「おしりの下」をカバーするため4本にしたかったんです。ところが試作品を作ってみると座布団を腰に巻きつけているような恰好で(笑)。 これはダメだと、結局2本のベルトに絞りました。2本でも巻くところをずらすことで、「腰」から「おしりの下」までをカバーできるようにしました。機能をどんどん盛り込んでいくのは実は簡単で、極限までシンプルにそぎ落としていく方が難しいかったです。 ――実際に使っていて、すごい!と感動したのは、痛くもなく、かといって弱すぎもしない、この絶妙な揉み具合。これはどうやって実現したんですか? 児島猛さん(以下、児島):「骨盤おしりリフレ」のエアーマッサージ技術は、マッサージチェアに使われているものと基本は同じです。問題だったのは、おしりまわりのどの部位にどんな刺激を与えるかという点。 自分で巻いたり、モニターさんに巻いてもらったりしていろいろ試しました。どんな刺激が快感で効果的なのか知りたくて、みんなでエステやあんまマッサージに行き体感や観察したこともありました。複雑なエアーマッサージパターンを何種類もつくり、何度も評価してやり直しました。結局、発売まで3年ほどかかりましたね。 骨盤のマッサージはプロでも難しい児島:実際に完成してプロのマッサージ師さんに製品を見てもらったところ、「これはすごい」と驚かれました。 骨盤まわりはカラダの中でも複雑、デリケートな部分で、マッサージで刺激を与えてもいい部分が限られています。その部分より上を刺激すると骨盤が開いてしまい、下の部分を刺激すると足が動きづらくなってしまう。つまり、プロにとっても難しい部位なんですね。 でも、「骨盤おしりリフレ」は、ストッパーに合わせて装着するだけで、誰でも正確にその部分を刺激できる。これはすごい!とプロに褒められた時は嬉しかったですね。 女性の「わがまま」をもっと形にしていきたい――発売後の反響はいかがですか? 山下恵さん(以下、山下):店舗の方からの評判も上々で、購入した方からは「プロにマッサージされているみたい」という声をたくさんいただきました。 ――30代、40代の女性の反応はどうでしたか? 山下:反響は大きかったです。なかでも、お子さんがいてなかなかマッサージに行けない方から「子どもを寝かしつける時間を有効活用して使っています」という声をいただいた時は嬉しかったです。リフレシリーズの「忙しい女性を少しでもラクに」というテーマが伝わっているんだな、と感じました。 左から、川治久邦さん、児島猛さん、山下恵さん ――確かに、手軽でコンパクトでないと続かないですよね。 山下:そうなんです。女性には、自分のカラダがラクになること以外にも、「収納しやすい」「汚れにくい」など、大切にしたいポイントがたくさんある。女性って、わがままなんですよね(笑)。社内には、女性が自由な感性で意見を言って、男性が確かな技術でそれを形にするという流れがあります。今後もそうやって「忙しい女性を少しでもラクに」する製品を作っていきたいですね。 |