81歳にして毎日Twitterを更新し、現在フォロワー数が58000人を超える女性、ミゾイキクコさんをご存知でしょうか。ご自身の戦争体験をはじめ、高齢者問題や嫁姑問題、結婚や子育てについてなど、女性の生き方についての本質をズバズバと突くツイートが、幅広い年齢層から大きな反響を呼んでいます。そんな彼女の“金言”を集めた書籍『何がいいかなんて終わってみないとわかりません。』(KADOKAWA)が出版されました。昔に比べ、女性の地位は向上したと言われる現在。それでも息苦しさを感じている人は少なくありません。そこで今回、人生の大先輩であるミゾイさんに、女性が抱えている問題について意見をうかがってきました。 戦争体験をツイートし、フォロワーが増えた――ミゾイさんは「株式取引」をやるためにパソコンを購入し、独学でホームページを作成したり、Excelで表計算をしたりしていたそうですが、Twitterを始めたのはどのようなキッカケだったのでしょうか。 ミゾイキクコ(以下、ミゾイ):2004年の中越地震のあと、柏崎出身の友人が廃炉運動団体に加入したんですね。その団体の催し物、イベントなどをするとき、なにか効果的な告知の方法はないか?と。それでTwitterを利用してみることにしました。ただ、Twitter告知をするにしてもフォロワーが少なかったらどうしようもない(笑)。それに気づいてからは、自分が戦争中に感じたこと、当時の体験などをツイートするようにしたんです。最初の2、3ヶ月でフォロワーが5000人に増えましたね。 ――フォロワーからの反応は、どんなものが多いですか? ミゾイ:若い人からの反応が意外と多いですね。特に戦争体験などは、すごく珍しいみたい。私も、自分より年上の方の、戦争体験ツイートは関心をもってよく読んでいます。「ああ、そうだったのか!」って思うことが多いです。戦争中や戦争直後のことって、2歳や3歳違うだけでも受け止め方がそれぞれ全然違うんですよ。私は昭和9年生まれで、新制中学の第1期生なんですよね。もう一つ上の、旧制の女学校に行った人たちの話は、経験していない私にはとても関心があります。 ――例えば、戦争体験についての書籍を1冊読む時間や余力はなくても、140ワードだったら読んでみようって思うかもしれないですよね。そういう意味ではTwitterの力はすごいなと。 ミゾイ:そうね。受け身の状態で常に情報を浴びられる。メッセージを拡散するという意味ではTwitterはすごい力がありますよね。 昔から男女の不公平さを感じていた――戦争体験以外の、人生や男女の問題、嫁姑問題などをつぶやくようになったのは? ミゾイ:それはやっぱり、昔から男女の不公平さっていうのを感じていたし、そのことを伝えたいと思ったからですよ。家事・育児にしろ介護にしろ女の人の負担が大きくて、それなのに、相当努力しても大した評価をされない。そういう不公平は、子供の頃から感じていたのです。 Twitterを始めて、いい機会だからと思ってバンバン書いてたら、反応もたくさん返ってきました。要するに、今は舅姑にすごく迷惑している人、不満に思っている人が多いんですよね。「世話するのが当たり前」みたいに思われている状態。 日々、愚痴を言われたりイビられたりしている。そういう人たちからのレスがいっぱいくる。 みんな言い返そうにも「お年寄りを大切に」って言われて育ってきたから、我慢してしまう。それどころか、お年寄りに不満を持つ自分を責めている。そこで“高齢者”である私がバンバンつぶやくことで、「なんだ、不満を持ってもいいのか」って思えて、口に出せるようになった。それだけでも気持ちがすっきりして、割合元気が出るものなんですよね(笑)。 ――問題の根本解決にはならなくとも、第一歩ではありますよね。 ミゾイ:そう。それだけでもTwitterっていいなと思いますね。 女性が独身のままで生きられる社会――ミゾイさんから見て、今の女性の社会的立場は変化してきたと思いますか? ミゾイ:それは変わってきましたよね。戦前は法律的にも女性は「一人前」とされていなかった。男の人が「保護者」になってくれないと生きにくいから、ほとんどの人が結婚を選びましたし、それが当たり前とされ、「結婚をしない」という選択肢はあまりなかったのです。でも、今は法律的にも女性の権利が認められていますし、女性の人も仕事や収入が当たり前のようにあって。最近は独身の人が多いですよね。 ――「結婚」という形を取らなくても、女性が子供を産んで育てながら、経済的に自立できるようになればいいのですが、実際はシングルマザーの貧困が大きな問題になっています。 ミゾイ:一人で子供を育てるのは大変ですよ。望んでそういうライフスタイルを選ぶ、経済的に自立した女性ならいいですが、無責任な男に逃げられて路頭に迷ったり、旦那が急死したりして貧困になってしまう女性が大勢います。そういう方たちのつぶやきも、よく目にするようになりました。 私から個別にレスを返すことはほとんどないのですが、同じような立場の人たちが忌憚なく意見を発することで、「自分と同じような境遇の人が、他にもいるのだ」ということを認識するだけでも、少しは気持ちが晴れる部分はあるのかもしれないですね。先ほどの「高齢者への敬意」の話と同じで、「勝手に肩身の狭い思いをしていたけど、そんなこと感じなくてもいい、そんなに不幸せなことではないんだ」と。 イチャモンをつけてくる人は即ブロック――ミゾイさんのつぶやきに関心を持って集まってきた、同じような境遇だったり、考えだったりする人たちの、意見交換の場が出来上がっている感じなのですね。逆に、Twitterをやっていて困るのはどんな人ですか? ミゾイ:やたらと絡んでくる人ですね。単に説明を求めているだけなのかな? と思ってレスをすると、それで納得してくれる人はいいのですが、話題をどんどんすり替えていつまでも納得しない人や、なんとかして私をやり込めないと気が済まないという人がたまにいます。 例えば私が、「『年寄りは敬わなければいけない』というけど、たとえ年寄りだろうと敬えない人を敬う必要なんてないんじゃない?」みたいなことをつぶやくと、「いや、年寄りは敬うべきだろ」みたいな感じで絡んでくる。 ――高齢者のミゾイさんに(笑)。 ミゾイ:で、そういうことを言ってくる人のアカウントを見てみると、常に文句ばっかりつぶやいているんですよね。きっと、何かに不満を持っていて、そのはけ口を探しているだけなのかなと。それと、そういう人たちって自分から何かを発信することってないんですよね。人の意見に対して常にイチャモンをつけている。即ブロックします(笑)。 【後編はこちら】「あなたのためを思って」という束縛がクソリプを生む 81歳のツイッタラーが語る、“常識”からの脱却 (黒田隆憲) |