■第31回 普通すぎる自分が嫌です 個性がないことで悩んでいます。とにかく何もかも普通なんです。私は小中高と公立で過ごして地元の短大に進学し、卒業後は県内の小さな会社で営業事務をして4年目という経験も普通だし、今までの恋愛も修羅場とかなく平和です。友だちはみんないい子ですが、変わった人とか話がおもしろい子は正直いません。類友なのかもしれません。べつに生きてて不自由はないんですが、Twitterでおもしろいツイートを見たり、壮絶なエピソードを読んだり、考え方が個性的な人に会ったりすると、いいな?と思って、普通でつまらない自分が嫌になります。今からでもおもしろい人とか変わった人になりたいんですが、やっぱり特殊な才能が必要なんでしょうか?(営業事務 26歳) 「ヘボンな毎日じゃつまんない!」by SPEEDんま?。「変わった人になりたいんですが、どうすればいいか」って、あからさまに「普通じゃない」女装のおじさんに聞けば教えてくれそうだと思ったわけねーギギギ。まぁ、そりゃそうよね。44歳になるおっさんが、キツめの女装でクネクネしながら仕事してんだから、普通の生き様じゃないのは、アタシも重々承知してますよ、ええ、ええ。でもアタシは別に「普通はイヤ!」とか思ってこんな風になったわけじゃないのよねぇ。 結局この話題って、大抵は「無い物ねだり」視点になりがちじゃない?普通自覚の人はSPEEDばりに「ヘボンな毎日じゃつまんない!」って言うし、いろいろ壮絶な人は疲れ果てて「何でもないようなことが幸せだったと思う」って言うみたいな。多分、あなたのこの発言にも「何、普通の幸せに守られてきたやつが好奇心程度で贅沢なこと言ってんだよ!普通になりたくてもなれなかった側の実際のしんどさ知ってんのか?」なんて感じちゃう、はぐれ者もいっぱいいると思うわ。 普通って一体何なのよそもそも「普通」って何なのって話よね。多分、容姿なり学力なりのそれぞれの項目における平均値付近をそう呼ぶんだろうけど、この項目って相当多岐にわたるでしょ。容姿・学力・体力・収入・家柄・職種…みたいなお見合いとかでも語られる代表的なプロフィール要素もあれば、鼻毛の数・好きなカレーの辛さ・デリケートゾーンの感度の良さ、みたいな細かい要素も膨大な数あるわけ。1つの項目に関しては、統計的にもっとも多い中心ゾーンに入る、全体の半分くらいの人を「普通」って呼んで良しとすると、この項目が増えれば増えるほど、「全てにおいて普通」の人なんてほとんどいなくなっていくわけよ。 確率2分の1の項目を2つとも満たす確率は4分の1。つまりチェック項目が5つだけでも、全ての項目が普通ゾーンに入ってる確率は、32分の1ってことになるんだもの。そういう意味では「アタシって何もかも普通でぇ」なんて言ってる人は、厳密にはウソつき!メイン項目、サブ項目、それぞれに最低いくつかは、統計的にもけっこう少数派の要素を持ってるはずなのよね。顔と体型は普通ゾーンでも、脇の臭さは偏差値70超え、とかさ。 変わってる人にだって、普通なところはあるでも、それでこそ人間おもしろいわけよ。「顔も体型も普通なのに、ワキガだけ日本有数の濃度なんてイヤ!」ってミュゼに駆け込んで、その特殊能力を潰す子も多いんだろうけど、それは同時に「見た目は普通っぽいのに、一皮むくと強烈な匂いを持つ女子が実は好みな、一見完璧なエリート男性」みたいな最高のマッチング相手をつかむチャンスを逃すことにもなるわけ。 だからアタシは「一見普通っぽい人が持つ、強烈な個性」も「一見変わり者が持つ、とてもまっとうな部分」もすごくステキだと思うわ。もちろん、表面的には変わっている属性をキャラにして仕事をしているアタシも、平凡な項目はいっぱいあるんだからね。乳首の大きさも、ごくごく普通だもん!(聞いてない) 普通の人たちがSNSで「ちょっと珍しい体験」を見せつけてる世の中よとまぁ、そもそも「普通」なんて幻想なんだよ!という基本をまず分かってもらった上で、あなたがまさしく自分で言っている通り、SNSなどのネットでつながった情報が、妙に「特別な人」願望をかき立ててしまってる状況はあるわよね。自分の日常や交友関係を世界に発信する1億総タレント意識な時代ですもの。少しでも目立ち、イイネをつけてもらったりフォローを増やしたい以上、その中でアピールされる情報は、「おおむね普通の人たち」がそれぞれの生活の中で見つけた「これは珍しい体験!」「これは自慢したいレア情報!」になるわけ。そういう部分だけを集めて見てれば「わー、みんなすごいおもしろい人生送ってるんだー」って見えるけど、それも普通と同じく幻想ってことよ。そしてあなたはそんなのにまんまと影響されちゃって「自分は普通でつまんない!」なんてネガティブに感じたのね。 変人になりたいという気持ちそのものが普通よねしつこいようだけど、本気でおかしな人は、みんな意識的に変になろうなんて思ってないから。もちろんあなたが今感じてるような「ちょっと変わってるもの好きな自分」願望って昔からあるし、そういうコはサブカルに走って、ヴィレッジヴァンガードに入りびたったりして、そのおかげで支えてもらえる主流じゃない商品もある。それはそれでいいんだけど、結局、普通幻想に囚われているからこその可愛い抵抗と自己満足でしかないってことでもあるのかもね。 「普通」を守られた安定ととるか、つまらない平凡な人生ととるか、「少数派」を仲間の少ない孤独ととるか、冒険心を満たす特別な生き様ととるか、どちらにも良い見方・悪い見方ができるし、項目ごとに人は普通と少数派、両方の要素を持って生きてるはずよ。 とりあえず、ハロウィンにでお手軽に変身してみたら?とりあえず、あなたくらいの「普通な自分がイヤ」ガールは、ハロウィンで「普通じゃない格好」に変身して大騒ぎしてみたら? んで、「ハロウィンの夜はほんとヤバかったよね?!」って普通じゃない体験を喜んでさ。ま、そのへんが、あなたが「普通」に楽しめる「特別感」じゃない?ふふふ。(ちょっと意地悪だったかしら!) |