ニンテンドーDSソフト『脳を鍛える大人のDSトレーニング』監修でおなじみの東北大学・川島隆太教授。新刊『ホットケーキで「脳力」が上がる』(小学館)では、親と子のコミュニケーションについて脳の研究から提言しています。今回は、子どもをもつ前の女性も知っておきたい、子どもの脳のためにできる生活習慣についてお話を伺いました。 ご飯を食べながらのスマホは中毒化を招く!ひとり暮らしでついやってしまう、スマホをチェックしながらのひとりご飯。川島教授はこれに警鐘を鳴らします。 「スマホを見ながらのご飯が、脳や消化に直接影響するという実証があるわけではありません。しかし“ながらスマホ”のクセがついてしまうと、将来子どもが生まれたときに、スマホを見ながらの“ながら育児”になってしまう可能性が生まれます。 2000年代に入ってから保健所の保険師さんから、授乳時に赤ちゃんと目を合わせないお母さんが増えていると聞くようになりました。スマホを見ているケースが多いそうなんですね。生活習慣は簡単には変えられません。スマホは何時間もネット空間を彷徨ってしまう“スマホ中毒”になる可能性が高いものです。せめてご飯のときはスマホを見ないという時間を作ってみてはいかがでしょうか」。 朝ご飯が充実すると子供の学力は高くなる前回は朝ご飯と大人の関係について伺いましたが、子どもの脳と朝ご飯も関係があるのでしょうか。 「文部科学省が朝ご飯と学力の関係を調査した結果、朝ご飯を食べてる子どもと全く食べていない子どもとでは、一教科につき約20点ほど差がでるとわかりました(参照:平成25年文部科学白書)。 「学ぶ」というのは脳の神経細胞を働かせて、脳線維を太くし、新しいシナプスを作るということです。そのためのエネルギー、ブドウ糖が必要なんですね。そして、ブドウ糖だけでなくおかずも必要というのは大人と同様です。それから脳だけでなく、基礎代謝、運動脳力にも関係します。 また朝ご飯の内容は、家庭ごとに差があり、それは家庭の年収に関係ないということがわかりました。年収が高くても朝ご飯はパンだけ、というご家庭もあるんです。仕事が忙しいなら、無理して朝に作らなくても、前日の晩についでに作るとか、晩ご飯の残り物だっていいと思いますよ」。 教育現場のタブレット端末導入はちょっと待て小学校の授業にタブレット端末が導入されるようになり、子どもたちは低学年からデジタル機器に触れるようになりました。これについても川島教授はこう語ります。 「タブレット端末の導入を始め、マルチメディア教育は、実は危険だと思っています。例えば絵にしても、絵の具を使うより、タブレットでお絵描きするほうが簡単にできてしまう。簡単な方を先に覚えると、子どもたちは、わざわざ大変な方をやろうと思わなくなりますよね。 調べものにしても、大学生を使った実験では、辞書を使って調べると脳の前頭前野が活発に働きますが、スマホとウィキペディアを使った調べものでは全く働かず、しかも弱い抑制がかかっていることがわかりました。教育は頭だけでなく、手や体を使って、それを鍛え上げること。マルチメディア教育で楽なことを教えるのは、教育の目的にそぐわなのではないかと思います」。 脳の活発度は遺伝しなくても、生活環境は伝わる脳の活性化を意識して生活するかしないかは、将来、子どもを持ったときに子どもに影響があるのでしょうか。 「親がいくら脳を鍛え上げても、反対に脳を使わなかったとしても、そのまま子どもに遺伝することはありません。しかし、生活環境は確実に伝わります。自覚しないうちにスマホ中毒になり、頭を使わない生活をしていたら、それを見ていた子どもも同じようになるでしょう。考えることや情報処理をコンピュータに頼っていると、人間は脳を使わなくなります。果たしてそれでいいのか、とても疑問に思います。現代の生活において、ゲーム、スマホを完全に使わないというのは、難しいと思いますが、それらは中毒化しやすく、また脳の働きが抑制されていることを意識して生活を見直してみてはいかがでしょうか」。 |