神田知宏弁護士 昨年11月18日、プライベートな性的画像などをネット上に流出させた元交際相手などを、親告罪で罰することができる、いわゆる「リベンジポルノ法」が成立しました。 これにより被害女性の泣き寝入りも減るのではないかと見られていますが、まだまだネット上で起こる様々な被害を解決するのは、難しいのが現状です。 「自分の名前で検索したら、悪口が出てきた」「本名で悪評を流された」「個人情報を書き込まれた」などなど、誰にでも起こりうる可能性がある問題を、“IT弁護士”として多くの被害を解決に導いている神田知宏弁護士に、ネット被害の実態とその解決法を、著書の『ネット検索が怖い 「忘れられる権利」の現状と活用』(ポプラ新書)に沿っておうかがいしました。 誹謗中傷の削除は、裁判所判断が必要なことも――神田先生の元へ来る相談者の方は、どんな悩みを抱えていることが多いですか? 神田知宏氏(以下、神田):やはり、「ネット上の誹謗中傷を何とかしたい。消したい」という相談が多いですね。 その場合、まずはサイトの運営者に削除請求のメールを出します。この対応がサイト管理者の方針によって全く違ってくるのですが、個人や中小企業が運営しているサイトは、メールを出すだけで消してくれることが多いです。削除請求メールを出すことは個人でも出来ます。運営サイドは、「誰が書いたのか」を知るためのIPアドレスの開示にも協力的です。 一方、ヤフーやサイバーエージェントなどの大きな会社は、メールだけでは消したりIPアドレスの開示には、なかなか応じてくれません。勝手に削除したりIPアドレスを開示することはサイトの信用を失うことに繋がりますから、所定の手続を取るよう指定されることもありますし、「裁判所の判断がないと削除しません」と言われ、裁判手続を取ることもあります。 ――裁判所が「消して」と判断すれば、消してくれますか? 神田:そうですね、「削除仮処分決定」が出れば、消さない会社はありません。日本の法律の下で運営している会社ですからね。本体は海外にあるものの、日本できちんと事業をしているツイッター社やフェイスブック社も同様です。 難しいのが、特定のポリシーを持っているサイト。表現の自由や情報共有などを過度に重視している管理者の場合、削除請求すると炎上するとか、拡散させてしまうことも稀にあります。 また、2ちゃんねる関連は違った意味での難しさがあります。2ちゃんねる本体のほか、ミラーサイトが山のようにあり、さらにまとめサイトで拡散され……と、同じ内容のものが増殖して、すべて削除するには手間と時間とコストがかかります。 削除請求は元サイトと検索サイト、どちらが有効?――では、どうすれはいいのでしょうか? 神田:炎上するかもしれないサイト、そしてとにかく数が膨大で1つ1つ消すことが難しいケース、となると、グーグルに検索結果を消すよう請求するのがよいでしょう。 私は2014年10月に、グーグルに対する「削除仮処分決定」を裁判所に出してもらったことがあったのですが、そのことが報道されて以降、「私もグーグルの検索結果を消してほしい」という相談が多くなりました。 ――1件1件消すことと検索結果を削除すること、どちらがオススメですが? 神田:根本的に解決したいなら、1件ずつ消していく方がいいですね、どんなキーワードで検索しても直接URLを入れても出てこないんだから。 それが理想ですが、裁判までいけば費用の相場は1件20〜30万円。いろんなサイトに拡散されていたら、莫大な料金がかかりますが、グーグルへの削除なら、相手はグーグル1社ですからもっと安くなります。 なかには、「ここまで拡散しているなら、多少炎上しても変わらないだろう」と開き直って、全て自分で1件1件削除請求している人もいますね。1年2年と、地道に消していけば、着実に減ってはいきます。 >>【後編はこちら】「ヤリマン」「尻軽」は名誉棄損 IT弁護士に聞く、悪質なネットの書き込みはどこまで削除できるのか |