(c)2014「太陽の坐る場所」製作委員会 地方出身者にとって上京するか否かは、大学進学、あるいは、社会人になるときに悩むところでしょう。ある人は可能性を信じて「絶対に東京に行く」といい、またある人は慣れ親しんだ地元の方が安心だから残る選択をする場合もあります。中には海外で自分を試したいと飛び立つ人もいるでしょう。 辻村深月原作の映画化『太陽の坐る場所』は、高校卒業後バラバラになった友達が同窓会で再会し、お互いの幸福を探り合う姿がリアルなアラサー女子映画です。友達は自分より幸福? それとも……。そんな風に比較せずにいられない気持ちはどこから来るのか。映画『太陽の坐る場所』から探っていきましょう! 同窓会に必ず出現する見栄っ張りな上京女子『太陽の坐る場所』は、響子(水川あさみ)と今日子(木村文乃)の学生時代と今が交錯して描かれる女のいびつな友情を描いています。学生時代に女王のように振る舞っていた響子、その陰だった今日子。しかし、二人の立場は卒業後に逆転します。女優として大成した今日子(芸名・キョウコ)と地元の局アナになった響子。地元開催の同窓会では、出席していないにもかかわらず話題の中心は今日子です。 響子は嫉妬メラメラ……かと思ったら、流されていく毎日にモヤモヤしているだけで、メラメラしているのは同級生の由希(森カンナ)。彼女が一番、上京組の苦渋を抱えていてリアルな存在です。 「仕事が忙しくて、やっと抜け出してきたのよ〜」と、由希はいかにもな自慢話しますからね。デザイナーといいながらも、実はアパレルに勤めているだけで成功はしていない。いますね〜、こういう見栄っ張り女子。都会ではイケてないけど、地元に帰れば東京で活躍中の自分を演じられる、地元の同級生を上から目線で見る快感を得られると思っているのです。その心は、上京して間違っていなかったと思いたいのでしょう。 地元で安定か地元から飛び出すかの選択(c)2014「太陽の坐る場所」製作委員会 由希は、元女王だった響子に敵対心を燃やし「地元のアイドル気取り」だと腹を立てています。上京してもさえない自分に対し、地元でそれなりにチヤホヤされている響子が面白くないのです。では女優の今日子は? というと、人気女優という手の届かないステージにあがってしまった彼女に対してもう同じ土俵じゃないと認めている様子。彼女のこの面倒くさい感じは、「上京してもうまくいかない、けどもう地元に戻れない」という苛立ちから来るものです。20代前半ならまだイケイケでいいけれど、アラサーになると「このまま私は終ってしまうのか」と焦りますからね。 正直、地元に残れば幸福かといえば、響子のように成長せずにモヤモヤする人もいるし、上京すれば楽しいかといえば、成功を掴み損ねて地団太を踏んでいる由希みたいな人もいます。では成功した今日子は幸福かといえば、思い出話を共有できる人がいなくて寂しそうです。でも彼女たちは不幸ではありません。というかこれが現実なのですよ。 幸福が宿る場所とは?幸福な場所なんてそう簡単に見つかるものではありません。ニコニコしていてもみんな何かしらの悩みや生きづらさを抱えているのです。だからといって由希みたいに他人の不幸を引きずり出しても意味はありません。 なんかイマイチという人生でも、好転させようと生きる。そのプロセスを前向きに楽しめればそれも幸福のひとつなのかなと。響子も今日子も囚われていた過去を乗り越えて、未来へと歩む兆しが見えますからね。“太陽が坐る場所”は、それぞれにあるのです。アラサー女子のみなさん、同窓会に出ても、元クラスメイトと自分を比べたりせず「みんな頑張っているんだ、じゃあ私も!」と思うことから始めましょう! ・『太陽の坐る場所』公開中 |