今月7日、夫の実父から精子提供を受けて体外受精を実施した不妊の夫婦114組から約20年間で173人の赤ちゃんが生まれたと諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(ねづ・やひろ)院長が発表しました。 家族のカタチが多様化している現在「なぜそこまで血縁にこだわるのか?」という意見もあるかもしれません。 「夫に似た子」が欲しいという思い根津院長は「(義父からの精子提供による体外受精を希望する夫婦は)家の存続や家にこだわっているというより、純粋に夫に似た子を夫の子として一緒に育てたいという妻の思い、誰かわからない匿名の第三者からの提供より夫のルーツである父からの提供を望む夫婦の気持ち、などから治療を希望されている(2014年7月の会見)」と述べています。 ジェンダー学、家族社会学が専門の千田有紀教授(武蔵大学)に今回のニュースについて聞いてみました。 「日本ではあまりクローズアップされていませんが、ヨーロッパでは子どもの『知る権利』が確立されてきました。その過程で、非配偶者による精子提供の場合、ドナーの情報が主に子どもに開示されなければいけないという法律が、さまざまな国でできています。また、今ではAID(非配偶者間人工授精)で誕生した子どもには、早いうちにその事実を知らせることが、のちのちアイデンティティクライシスや家族の問題を引き起こさないためにも望ましいとされています」 「その場合、義父の精子を利用して生まれたという事実を子どもに開示できるのか、開示された場合子どもはどう思うのか、問題は山積だと思います。さらに夫の兄弟の精子を用いた場合は、婚姻も可能ないとこでありながら、生物学的には、結婚が禁止されている近親者であるきょうだいであるなど、家族の問題関係が複雑になってしまうと思います」とコメントしています。 生殖補助技術が進歩するスピードに法整備や人々の意識が追いついていないというのが現状です。人工授精や対外受精で生まれてくる子どもたちのためにも議論と法整備は待ったなしで進められるべきでしょう。 (編集部) |