仕事でナメられたくない。でも、親しみやすいキャラもキープしたい。キャリアもプライベートも大事にしたい30代女子にありがちなお悩みを、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)が大ヒット中のヘアライター佐藤友美(さとう・ゆみ)さんと『美人な「しぐさ」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者でイメージコンサルタントの中井信之(なかい・のぶゆき)さんにぶつけてみました。 これまで「髪」と「しぐさ」で多くの女性の運命を開花させてきたお二人が教えてくれるセルフ・ブランディングの極意とは? 必死に見えない「できる女」とは?佐藤友美さん(以下、佐藤):バリバリ仕事をしている女性と話をすると、スキがなくて怖いと思われていることに悩んでいるケースが多いように感じます。 中井信之さん(以下、中井):そうですね。お嬢さん扱いされて困るというより、真剣に仕事に打ち込むあまり相手を見るまなざしが強くなり過ぎて、結果的に「威圧感」が出ちゃったりしてね。 佐藤:ですから、まず覚えるべきは“どう見せるか”よりも“どう崩すか”なんじゃないかな、と。完璧な美人よりも、「雰囲気が美人」を目指した方がいいと思います。 中井:雰囲気美人とは? 佐藤:例えば、アイラインを何ミリ外に引くかといった「細かい見た目」よりも、少し離れたところから見て「ああ、この人は素敵だな」と思われる、もっとザックリとした「美人感」というか。 中井:そういう「美人感」を僕の専門分野で言い換えると、「姿勢」と「スピード」になりますね。てきぱきしている人とのんびりしている人、性格だから善し悪しはないんだけど、その場に合わせたスピードじゃないと、まわりをやきもきさせてしまいますよね。特に仕事ができる人って、スピードが周囲より早過ぎてせっかちな印象を与えちゃう。そこで損してる人も結構いるな、と。 佐藤:私がそうかもしれません(笑)。昔は蓮舫さんのようなベリーショートで、発言もド直球だったので、よく怖い人だと思われていて、それが悩みでした。“ふんわりした女性らしさ”を意識するようになって、この2年ほどは、髪を伸ばして、コンサバな服を着たりしています。まさに、ブランディング・チェンジ中。 自分が今どのフェーズにあるのか把握する中井:今の佐藤さんからは想像もつかないけど、ツンツンした短髪に金髪で、かなりユニークなファッションだった時期もあったとか。 佐藤:はい。美容業界ではアバンギャルドな格好の方が溶け込めたので。ですが、編集やライティングの仕事が増えるにつれて、見た目で不利になる場面も出てきて。 中井:誰にどう思われたいかは大事ですよね。とにかく早く上司から認められる必要があるならパキッとしたファッションや動作。すでにそれなりのポジションにいるので、後輩から慕われたいならユルッとした感じ。というように、まずは自分が今どの位置にいて、どこへ向かいたいのか把握する。それが第一歩です。 佐藤:自分の好きなことを仕事にしたいと起業する女性も増えていますよね。複数の仕事を掛け持ちするパラレルキャリアも珍しくなくなりました。会社の外でも自分の顔や名前で勝負する女性こそ、ブランディングは重要。髪型やしぐさを武器として積極的に活用してほしいです。 中井:そうですね。会社員なら就業時間でオンとオフの区切りをつけられますが、自分が代表になればライフスタイルを含めてすべてが商品やサービスになりますから。でも、背伸びして外面だけ変えても、すぐにボロが出る。本来の自分がどういう人物なのか、どんな仕事をしていて、理想の結果とは何か。カチッと決めたら、しばらくはそれを変えずに続けてみる。地に足をつけて「設定」を作り込んでいくのが大事ですね。 佐藤:ええ、ホームページやSNSで個人がこれだけ発信する時代になると、裏表なんて作れませんよね。例えば、女性美容師さんだと、「ここのお洋服を買いました」とか、「このコスメを買いました」といった日常の小さなこともブランディングになります。どんなキャラクターを演出するのか、軸がブレるとおかしくなる。だから中井さんがおっしゃったように、自分がどうなりたくて、その“らしさ”をどう表現するか、24時間365日、一貫しているほうがラクだと思いますね。 「シンデレラごっこ」で持続するブランディングを中井:矛盾している人は信頼できませんよね。あるいは、“イタい”と笑われてしまう。女性の目ってそのあたりがすごく厳しくて。そのバランスは難しいけど、ちゃんと作ることが大事。そういうのはどうやって決めたらいいのかな。 佐藤:それなら私のおすすめは「シンデレラごっこ」。憧れのあの人だったらこんな時どうするだろう、何て言うだろうと考えるんです。ポイントは、女優さんでも身近な人でも、漫画のキャラクターでもいいから、できるだけリアルに想像できそうな人を選ぶこと。考えていくうちに憧れに近づいていくんです。 中井:観察してモデリングするのは、僕のレッスンでも取り入れています。動作、行動、髪型、なんでもまずマネをしてみる。すると、どうしても近づかないところが出てくる。でも逆にそこが“個性”としてその人のコアになったりする。だから面白いんですよね。 中井:他にもおすすめの方法はありますか? 佐藤:私のワークショップではよく参加者の方に、「どんな言葉で褒められたいか30個くらい書き出してください」と課題を出します。で、30個を最終的に3つまで絞るんです。そうすると、「なりたい自分」が見えてきます。不思議と3つは「優しい」「癒し系」「落ち着いている」というふうにまとまっているものなんです。 中井:へえ。面白いな。ところで佐藤さんはまさにブランディング・チェンジ中とのことですが、うまくいっていますか? 佐藤:そういえば、先日、昔の職場の上司にバッタリ会って。「生意気言っていたおまえがずいぶん女らしくなったな」って言われました(笑)。タクシーに乗る時のしぐさも気をつけるようにしたら、運転手さんに丁寧に扱われるようになりましたし。あれ、使えますよね! 中井:『美人な「しぐさ」』の中で紹介した、“美人はゴージャスに車を乗り降りする”の部分ですね。運転手さんはたくさんのお客さんを見ているから、ちゃんとしている人とそうじゃない人を即座に見分けられる。僕はしぐさについていろんなメソッドを紹介しているけど、常々思うことが一つあるんです。それは気持ちが伴っていないとうまくいかないということ。なりたい自分を決めて、ヘアスタイルで意識を変えたら、仕上げにしぐさを覚える。この順番が大事だな、って。
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