今月3日、ポーランドの首都・ワルシャワで「人工妊娠中絶」をほぼ全面的に禁止する改正法案に対し、約2000人の女性が抗議デモを行ないました。 もともとポーランドでは、母体に生命の危険がある場合や強姦などによる妊娠を除いて中絶が禁止されて、違反すれば最高で禁錮2年の刑が科されていました。そして先月末から審議中の改正法案では、母体に生命の危険がある場合以外の中絶は違法となり、強姦や近親相姦など望まない妊娠をした際も中絶は認められません。さらに量刑も最高で禁錮5年へ引き上げとなります。 日本では2013年度の20歳未満の人工妊娠中絶件数は約1万9000件にものぼると言われており(厚生労働省「平成25年度衛生行政報告例の概況」調べ)、当たり前のように行なわれている人工妊娠中絶ですが、実はこれは世界ではかなり珍しいことなのです。 宗教観によって大きく左右される世界の人工妊娠中絶事情について、咲江レディスクリニックの丹羽咲江院長に伺いました。 「人工妊娠中絶は宗教観によりかなり左右されます。主にキリスト教徒の多いアメリカでは論争が長く続いているものの基本的に堕胎は認められておらず、一部の州では強姦や近親相姦による妊娠や母体の健康に危険がある場合や胎児異常などの場合を除いては、中絶を認めないという法もあります。2013年にはノースダコタ州で中絶を全面禁止する法律が成立しました。韓国でも儒教的観点から禁止されています」 一方で宗教観はあるものの認められている国や、ある政策により望まない妊娠自体が減少傾向にある国もあるようです。 「フランスではカトリック教会や中絶反対派もいるものの“中絶は女性の権利”とされ認められています。ドイツでは刑法で中絶は禁止されているもののピルの金額設定が低いために服用率がもっとも高く、望まない妊娠そのものの件数が少ないのです。また、中国では儒教的観点で禁止されていたものの“一人っ子政策”の施行後は公的に認められているようです」 非合法の中絶手術も行われている丹羽先生は「ポーランドの中絶禁止法が可決されたら、より多くの女性が悲しみ傷つき、危険にさらされることになるのではないか」と危惧も。 「人工妊娠中絶が禁止されている国でも非合法に中絶手術を行なわれている場合も多く、不適切な中絶処置を受けて死に至るケースもあり、人工妊娠中絶においてはさまざまな国で深刻な問題とされているのも事実です。やはり望まない妊娠をした時の対処として、人工妊娠中絶は必要ではないでしょうか。予期しない妊娠を防ぐための正しい性の知識をもつことが重要です」 (河合桃子) |