「自覚症状は何もなかったのに、病院で精液検査をしたら男性不妊だった……」不妊の原因の約5割が男性にある今の時代、そんなケースも決して珍しくありません。 でも、その原因はどこにあるの? 将来、子どもを持つ可能性があるなら気をつけておきたいパートナーの習慣について、不妊体験者を支援するNPO法人Fineの理事長・松本亜樹子(まつもと・あきこ)さんに聞きました。 「精子力」は世界的にダウンしている――最近では世界的に男女の生殖能力が低下しているという話もありますが、男性不妊に関しては、その理由はどこにあるのでしょう? 松本亜樹子さん(以下、松本):今もっとも問題視されているのは、「精子力」の低下ですね。精子の数や質が明らかに下降していると言われているんです。WHO(世界保健機構)が出している、精液pH、精子濃度、総精子数、精子運動率、正常形態精子率の値が、どれも基準値以下になっています。 この背景には、生活習慣の乱れ、環境ホルモン、地球温暖化など、さまざまな要因があって、原因をなかなか特定できないのです。 ワースト習慣1:局部を温める――精子力を低下させる要因にはどんなものが? 松本:特に多い例を挙げるとしたら、一つは男性の局部を温めること。精子をつくる精巣は熱に弱く、股間を高熱にさらすことは、精子をつくる造精機能に悪影響を及ぼすといわれています。ですので、電車やベンチで放熱しているパソコンを膝に置いて仕事をしている男性をよく見かけますが、あれは避けた方がいいですね。同様に、サウナや長風呂もほどほどにした方がよいようです。 ワースト習慣2:タバコ松本:また、喫煙はいうまでもなく身体によくないため、不妊治療では男女ともに、まず禁煙を勧められる場合が多いですね。タバコを吸うと血管が収縮して血流が悪くなります。男性の場合、血管がたくさんあるペニスに血液が流れにくくなることから、ED(勃起不全)を招きやすくなりますし、喫煙自体、精子数や運動率を下げるといわれています。 ワースト習慣3:禁欲松本:そして、禁欲もよくないとされています。精子は毎日つくられるもの。そのため、射精しないと古い精子が溜まり精液全体の質を下げてしまいます。またあるデータによると、精子のDNA損傷率が高くなる傾向があるそうです。なので、無理のない範囲でできるだけセックスをして、新しい精子が日々つくられるようにした方がいいと思いますね。 妊活の主役は卵子だけではない――普段何気なくしている行動や生活習慣が、男性不妊の原因になることがあるんですね。 松本:私たちが「男性不妊」の知識を一番に届けたいのは、 実は10〜20代の若年層の男性なんです。生活習慣は日々の積み重ねですから、結婚してからでは間に合わないかもしれません。 男女ともに不妊のリスクファクターを若いうちから理解して、摘み取っておくのはとても重要なことだと思いますよ。こういう小さなことから始めないと、今後も不妊は増える一方ではないでしょうか。 妊活の主役は、卵子の持ち主である女性だけではありません。男性も女性も、若いうちから妊娠や不妊に対する知識を身につけ、身体を整えておくことが大事だと思います。 参照:泌尿器科医 岡田弘オフィシャルサイト「男性不妊バイブル」 (江川知里) 松本亜樹子(まつもと・あきこ)NPO法人Fine理事長。一般社団法人日本支援対話学会理事。長崎県長崎市生まれ。コーチ、企業研修講師、フリーアナウンサーとして全国で活躍。2004年、NPO法人Fine〜現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会〜(http://j-fine.jp/)を立ち上げる。自身の不妊の体験を活かして『ひとりじゃないよ!不妊治療』(角川書店、共著)、『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)を出版。 |