「授からないな、と思っていたら、パートナーが男性不妊だった」その時、どうすればいいの? 最近急増しているという「男性不妊」の治療法についてまとめました。夫婦で共有しておきたい基礎知識とは。 「男性不妊」は大きく分けると3種類男性不妊は、大きく分けると3種類あります。 一つ目は、精子に何かしらの異常があり、受精しにくくなっている「造精機能障害」。具体的には、精子の数が少ない「乏精子症」、精子の運動率が低い「精子無力症」、正常形態の精子が少ない「奇形精子症」、精液の中に精子が見つからない「無精子症」など。さらに、精巣の周囲の静脈にこぶのようなものができ、精子の力が低下する「精索静脈瘤」もあります。 二つ目は、精路通過障害。これは、精子の通り道である精管や尿道が詰まったり狭くなったりして、精子を射出しにくくなっている状態です。 三つ目は、ED(勃起不全)や射精障害など、性機能に問題があるケース。これらの多くは、ストレスなどの精神的な原因が考えられます。最後のケースを除くと「男性不妊」の自覚症状はまずなく、精液検査をしては初めてわかることがほとんどのようです。 検査・治療は男性不妊に詳しい泌尿器科へ妊活を続けているのに「なかなか妊娠しない」と感じている場合は、不妊に詳しい医療施設で検査が必要になってきます。 最初に産婦人科で精液検査を受けて問題があると診断されたら、男性不妊に詳しい泌尿器科を訪ねます。ここでは、問診、視診・触診、精液検査、ホルモン検査(血液検査)、超音波検査などが行われ、その結果によって原因がわかれば、それに合わせた治療を行うという流れに。 精子の健康レベルによって治療が変わるでは、「男性不妊」と診断された場合、具体的にどんな治療を受ければいいのでしょう? 基本的には、精子数が少ないほど高度な治療を受けることになるのだそう。検査で「正常値」だった場合は、排卵日に合わせてセックスをするタイミング法を。精子の数や運動率が低い場合、奇形率が高い場合は、人工受精や顕微授精に進むことになります。 さらに、精子がかなり少ない場合はホルモン治療を、精子が見当たらない場合はConventional TESE*、MD-TESE**、精路再建術***といった手術が行われます。 *Conventional TESE:精巣から精巣組織を取り出し、その中から精子を見つける精巣内精子採取術。 **MD-TESE:精巣から精細管を採って精子を探す顕微鏡下術。 ***精路再建術:検査で精子が見当たらない「無精子症」には、精子の通り道がふさがっている「閉塞性」と、通り道は通っているが精子をつくる力に問題がある「非閉塞性」があり、前者に対して行われる精子の道をつける手術 1回の治療で100万近くかかるケースも体外受精は1回に50万円以上かかるとも言われますが、男性不妊の治療には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか? 男性不妊の治療には、体外授精や顕微授精など女性に対する治療も必要な場合がほとんどです。具体的には、精巣内精子採取術は1回で約10〜45万円。これらの費用に加え、体外受精や顕微授精といった高度不妊治療には、1回につき40〜60万円かかりますから、合わせるとかなりの額になります。 保険適用の効かない不妊治療は、お金との闘い。そして、年齢という時間との闘いでもあります。もし、パートナーが男性不妊だとわかったら、治療をいつどのようにスタートするか、夫婦で話し合っておくのもいいかもしれません。 参照:『不妊治療を考えたら読む本』(講談社) 泌尿器科医 岡田弘オフィシャルサイト「男性不妊バイブル」
(江川知里) |