読者から寄せられたリアリティある「クソバイス」(言われるとイラッとするアドバイス)を綴った『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)を上梓したエッセイストの犬山紙子さんと、“よっぴー”ことニッポン放送アナウンサー・吉田尚記さんの対談の後編。前編・中編では、クソバイスをする人の心理や、「相手にインタビューする」という対処法が語られた。後編では、クソバイスに対する男女の心境の違いについて話し合った。 【前編はこちら】イラつくアドバイスをしてくる人の心理とは? 犬山紙子と吉田尚記アナが分析 【中編はこちら】ムカつく発言は「相手へのインタビュー」で受け流せ 犬山紙子×吉田尚記アナ対談 男性はクソバイスを受け流している???『言ってはいけないクソバイス』で紹介されているのは、比較的、女性の発言が多いような気がしました。 犬山紙子(以下、犬山):今回、私にクソバイスを寄せてくれた層に女性が多いという理由もありますが、男性はクソバイスされることが少ない、というか流している人が多いようです。「男は嫁さんをもらってから社会的信用があるから結婚しろ」とか、それめちゃくちゃクソバイスでしょっと言葉を投げかけられている人も多いと思うんですが、聞き流している。無意識でか意識的なのかはわからないですが。 吉田尚記(以下、吉田):たしかに、男性は言われても「はぁ、さようでございますか」という感じのところはあるかもしれない。 犬山:子どもや妊娠の話題は、女性のほうがダイレクトに響くっていうのもありますね。子どもがほしいかほしくないかもまだわからないけれど、タイムリミットだけはじりじりと迫っていて、そのためには早く結婚したほうがいいし、でも……とただでさえ悩んでいるなかで、「結婚しろ」「子どもを産め」という社会的な圧力を感じる。そういう状況でクソバイスをされると、男性よりも傷ついたり、イラッとしたりする。さらに、自分が悪いと思い込んでしまう傾向にあるんですよね。この本で、「あなたは悪くないよ。それはクソバイスだからイラついていいし、クソと思っていいんだよ」ということをこの本で伝えたかったんです。 左:犬山紙子さん 右:吉田尚記さん ――男性がクソバイスを流す傾向にあるのはなぜなのでしょうか。 犬山:それはやっぱり、社会の仕組みのなのかな。 吉田:トランスジェンダーの新井祥さんという漫画家さんがいるのですが、男性のときも女性のときも漫画を描いていらっしゃる。『性別が、ない!』(ぶんか社)という漫画で、男性と女性の世界を書いた4コマがあるんですが、そこで「男性の世界は砂漠にときどきオアシスがある感じで、基本的に放っておかれている。一方、女性の世界は基本的に優しい世界で、ときどき毒針がある」というようなことが描かれていて。これで納得いったんですよ。男はほとんどの場合、放っておかれているんですよ。女性の方がクソバイスをされがちで男性の方が言われないのは、放っておかれているというのもあるのかなと。 犬山:なるほど。たしかに女性は性的に守られなきゃいけない存在として、子どもの頃から親に守られ、恋人なんかについても干渉されることが多いと思います。その延長で他人からも守られ、そして干渉される。干渉されやすい性なんですよね、そして時にクソバイスという毒針に刺される。 吉田:「この漫画、翻訳して世界中に配信してもいいのではないか」と思うくらい、腑に落ちましたね。 吉田尚記さん 女子会で嫌なことをネタにして昇華する犬山:吉田さんとお話していて、受け身がお上手なんだなと感じました。おもしろがったり、インタビューをしたりという、自分でどうにかする対処法が身についている。 吉田:女性の場合、クソバイスは現実的にどう消化されているんですか。 犬山:クソバイスを女子会でネタにして「これ腹が立ったわ」「それはひどい」と言い合うことで発散している人が多いんじゃないかな。 吉田:そういえば、あるとき元SKE48の松井玲奈ちゃんに「女子は周囲からとやかく言われて大変じゃない?」と聞いたら、「だから女子には女子会があるんですよ」と言われたことがあります。「男子会」ってないし、必要もないんですよね。仮にあったとしても、「あの女の子にこんなこと言われたんだけど……」とか言い合うことなんてことはないです。 犬山:「女子会」ってディスられることが非常に多いですけど、嫌なことを笑いに昇華してスッキリする浄化装置だから、必要なものだと私は思います。 犬山紙子さん 吉田:ここまでお話して思いましたが、クソバイザーを減らすのは人類史上無理だなと(笑)。 犬山:かなり難しいですね(笑)。ただ、クソバイスっていう概念が少し知られると、発言する側が「これってクソバイスなのかな?」と考えることができて、ちょっとは減っていくんじゃないかって。あと、「クソバイス、まともに受け取らなくていいんだよ!」という認識が広まったら嬉しいですね。
|