1人のママがインスタグラムにフレンチブルドッグの「ムー」と3歳の男の子「たすく」くんの日々の写真を掲載。それが瞬く間に人気となり、世界中からフォロワーが集まりました。それをきっかけに、フォトブック『ムーとたすく』を出版。まさにSNS時代を象徴するような出来事ですが、その後、弟が生まれ、今月、2冊目となる写真絵本『きょうはなにする? ムーとたすく』(ポプラ社)が刊行されました。 子どもたちと「ムー」が世界的な人気者になったこと、SNSに子どもの写真を載せることなどについて、著者であり、ふたりといっぴきのママであるAyasakaiさんにお話を伺いました。 犬ブログから犬×子供のインスタグラムへ――まず、1冊目の写真集である『ムーとたすく』が生まれた背景について教えてください。
Ayasakaiさん(以下Aya):子供ができる前にはムーさん、それから亡くなってしまったロッちゃんというフレンチブルドッグを飼っていました。そこにたすくが生まれたので、ムーさんはたすくのお兄ちゃんなんです。写真はもともと好きで、犬に関するブログはやっていたのですが、出産後は一眼レフで撮影したり、PCを立ち上げることが少なくなってしまい_……。常に身近にあるiPhoneのカメラ機能を使うようになり、ムーとたすくの成長記録を残す日記のつもりで、iPhoneだけで完結するインスタグラムを使い始めました。 Weiboで火が点き、写真集と絵本として書籍化――インスタグラムのフォロワーはすでに60万人を超えているんですよね。きっかけは中国で火が点いたことだとお聞きしているのですが、その後、1冊目の写真集である『ムーとたすく』が出版されるまでの経緯を教えてください。 Aya:まず、中国の「Weibo」(ツイッター・フェイスブックに変わる中国最大のSNS)で写真が広まったようで、ある日を境に爆発的にフォロワーが増えていきました。その数か月後にアメリカのYahoo!やMSNのようなニュースサイトで取り上げていただき、いろいろな国からコメントをいただくようになったんです。しばらくして、出版のオファーもいくつか舞い込み、数か月間は悩んだのですが、その中から、「写真集と絵本」という切り口の企画を持ってきてくださったポプラ社さんとのお話を進めることになりました。 人気が出たことで生まれた周囲の反応――そもそものところで、Ayaさんが犬と子供の成長日記としてインスタグラムを使い始めた頃、ここまでの展開は予想していなかったのでは、と思います。フォロワーが爆発的に増えた時、子供の写真が数多くの人の目に触れることが気になったりはしませんでしたか? Aya:はい、すごく気になりました。子供の写真をアップすることに対していろいろなコメントをいただいていたんですけれど、大半は「ありがとう」「優しい気持ちになりました」「癒されました」といったものでしたし、ごく一部の心ないコメントに落ち込んだり、起こってもいない先のことを心配してネガティヴな選択をするのは止めようと思ったんです。ただ、写真を選ぶにしても、すごく慎重にはなりましたね。将来的にはたすくに、「たっくんはいろいろな人に『ありがとう』と言われていたんだよ」と話してあげられたら、と思います。 ――『ムーとたすく』が出版されることになって以降、周りの反応はいかがでしたか?
Aya:実はフォロワー数が増えた頃から、近い友達からは「そのうち本が出るんじゃないの?」なんて冗談交じりに言われていたんです。なので、お話をいただいた時には「やっぱりね」という反応で、書籍化が進み始めた頃にはすでに話題にものぼらず(笑)。逆に言えば、今まで通りに接してくれるのがありがたいですね。 ――書籍化にあたり、Ayasakaiという「著者」については意識しましたか? Aya:インスタグラムで発信していた頃から変わらず、写真やプロフィールで個人を特定できるような出し方はしたくないと思っていました。あくまでインスタグラムのAyasakaiというアカウントの写真でフォロワー数が増えたので、写真の世界にフォーカスした本にしたいという思いはありましたね。 オフラインでも3万部を突破し、早くも続編を出版――『ムーとたすく』から1年強、早くも続編となる『きょうはなにする? ムーとたすく』が刊行されましたが、前作から特に意識して変えた点などはありましたか? Aya:今回は1冊目での経験をもとに、自分のやりたいことやイメージが膨らんでいたのもあって、より絵本っぽい感じを出したくて判型を変えたり、イラストや切り抜き写真を入れられたらと思っていたので、下田昌克さんにイラストをお願いしたり、希望をたくさん出させてもらいました。 ――被写体が「ふたりといっぴき」になったことで、写真の撮り方も変わってきたのではないでしょうか? Aya:だんだん子供が動くようになってくると、やっぱりブレやすくて(笑)。あと、みんなを一緒に撮るのが難しいのと、子供が1人増えた分、撮れる写真の枚数は減りましたね。部屋も散らかるようになってきて、でも自然な状態を撮っておきたいので、散乱したおもちゃも一緒に収めるようにはしています。最近はたすくがカメラ目線をしたり、ポーズをとるようにもなりました。そういう時は記念に収めておいたりはするものの、インスタグラムにはアップしません(笑)。 自然体でマイペースに日々を写真に収めていく――どうしたら子供の自然な表情を撮れるのでしょうか? Aya:私は「撮るよー」と予告せず、普通にゴロゴロしているところや、テレビに集中している隙に撮っちゃいます。でも、私がいつもパシャパシャ撮っているので、たすくもそんなに気にならないのだと思います。同じ場所にいる主人から、「え、いつの間に撮ったの?」と言われることも多いですね。 ――ここ数年、猫パワーがすごかったので、犬代表のムーさん、そしてたすくくんと弟のせっちゃんの成長を今後も楽しみにしています。 Aya:猫も好きですけどね(笑)。今後は……どうなるんでしょうか。私の中では、フォトブックと写真絵本を出版できたことで、ひと段落した気はします(笑)。インスタグラムもマイペースに続けていこうと思っていて、最初は1日1枚写真をアップしようと意識していたのですが、いまも写真を撮ってはいるものの、無理せず1、2週間ごとに更新しています。 ――最後に、ふたりといっぴきの生活を記録し続ける中で、Ayaさん自身が気づいたことや得たものはありますか? Aya:写真ってその瞬間を切り取っているものだから、いまこうして本として見られることは、私にとっての財産です。何気ない日々の記録から、家族との時間はかけがえのないものだということに、改めて気付かされたように思います。
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