靴、洋服、バッグ、財布……。ファッションの世界では「メンズ」「レディース」の区別があるのが常。 その状況が今「ジェンダーニュートラルファッション」の台頭により徐々に変わりつつあります。 どんなジェンダーの人にでも当てはまるファッションジェンダーニュートラルファッションとは、男性用/女性用と分けてサイズやスタイル展開をするのではなく、どんなジェンダーの人にでも当てはまるファッションのことです。 ハイファッションの世界では、ジェンダーニュートラルの考え方は新しいものではありません。グッチ、プラダ、ジバンシィ、イヴ・サンローラン……「ユニセックス」や「両性具有」をテーマにしたコレクションはこれまでも繰り返し現れてきました。 今年2月に行われたニューヨーク・ファッション・ウィークでも、ブランドの枠を超えた多くのブランドがジェンダーの枠を超えたジェンダーニュートラルなスタイルを発表し、また、女性コレクションに、男性モデルがキャストされたり、トランスジェンダーのモデルがランウェイを闊歩するシーンも見られました。 小売店でもジェンダーニュートラルな売り場を展開注目すべきは、このような「ジェンダーニュートラル」な流れが、コレクションだけでなく、実際に人々が買い物をする小売店にまで及んできている点。 今年、イギリスの老舗百貨店セルフリッジズは「ジェンダー」「ニュートラル」をコンセプトにしたコーナーAgenderを設置。 「私達は、限界やステロタイプなしで買い物し、着飾れるような世界へと顧客をいざないます」とし、コム・デ・ギャルソンをはじめとする40ほどのブランドを展示して話題になりました。 アメリカの大手小売りチェーンターゲットでは、子供服コーナーの一部でジェンダー別陳列を取りやめると発表をしています。「ジェンダー」にとらわれない買い物体験を求める消費者が徐々に増えているのです。 LGBTコミュニティとジェンダーニュートラルジェンダーニュートラルファッションは、歴史的にLGBTコミュニティのなかで支持されてきました。生まれ持った肉体と異なる性自認を持つトランスジェンダーの人々や、異性愛社会において当然とされがちな性別役割分担に疑問を持つことの多いゲイ・レズビアン・バイセクシャルの人々が「自らの着る服がない」として、ジェンダーニュートラルファッションを作り、支持してきた側面があるからです。 「女性の恋人と同性婚しようとした時に自分が何を着ていいのかわからなかった」というマリー・ゴールドさんもその一人です。「ドレスは、似合わないし、着たくありません。男物のスーツを買おうとしたけれど、身体に合うものは一つもなかったし、店の態度はとても屈辱的なものでした」 彼女は似たような思いをする仲間のために、ジェンダーニュートラルなスーツブランド「Saint Harridan」を始めました。 単なるトレンドではない、ファッションの未来ジェンダーニュートラルファッションを熱烈に支持するもう一つの層、それは若者です。 米マーケット会社JWTIntelligenceの調査によれば、1996年から2000年前半に生まれた12歳?19歳の「ジェネレーションZ」と呼ばれる世代の8割以上が「性指向を気にしない」と答えています。「この世代にとっては、男女の差異はより微妙なもので、ファッションはその意識を反映しているのです」とディレクターのルーシー・グリーンさんは語っています。 ジェンダーニュートラルファッションは季節とともに廃れていくトレンドではなく、ファッションの未来形なのかもしれません。 |