日本でもまだまだ多いブランド好きな女性たち。ところが、自分の生活費を削ってまでブランド品を買う人は要注意。なぜなら、それは立派な「中毒症状」かもしれないからだ。特に今回、フランスの『LE FIGARO madame』では、ブランド品の靴を買うのをやめられない2人の女性を紹介しながら、靴ショッピング中毒の危険性をとりあげている。 食費を減らしてお金をやりくりして買う車のセールス業で働いているアラフォー女性、ステファンさんは、初任給をもらって以来、毎月巨額の金を靴に費やし続けているという。1足の靴にかける金額は、最低でも250?2000ユーロ(約3?26万円)。 「靴を買うことは、私の生活習慣の中でとても大切なことです。憂鬱な日や、モノトーンの服を着ることの多い私に元気を与えてくれるからです。今日もまたイヴ・サン・ローランの靴を1足買いたいなと思っているんですよ」(ステファンさん) 若い世代は、より中毒性が高いことも見られる。パリで法律を学んでいる学生のクレモンティーヌさん25歳の場合。 「私は靴という芸術作品が大好きなんです。金額はいといません。ルブタンの靴を1足買うために、ハンドバックの半分とソファーを売ってしまいました。でも、また買いたくなったら1週間、食費を減らしてお金をやりくりすると思います」(クレモンティーヌさん) フランス人女性は年間で1人平均5.5足の靴を買うフランスで靴のマーケティングを担当するドーヴァルさんは次のように語る。 「フランスの女性にとって、靴は『強迫観念』といえるでしょう。実は世界で一番靴を買うのはフランス人女性で、1年間に1人平均5.5足の靴を買っています(2位はアメリカ)。15歳から25歳の女性の家には17足の靴があり、3%の女性は30足以上の靴を所有しているのです」 なお、フランスでは年間3億5,000足もの靴が売られているという。筆者の住むパリでも、街中に靴屋があるなと思ってはいたが、この数字をみると納得いく。特にパリなんかの都心では、何歳になっても女性であることを意識する人が多い。この「女性であること」を演出してくれるのは、バッグよりもヒールの高い靴であることは想像がつくだろう。 他人から自分は上と見られたい欲求がブランド製品への欲求にでは、どうしてフランス人女性は、「靴」を買うことが止められないのか? また、どうしてそれが「強迫観念」にまでなってしまうのか、ファッション歴史家のティエリーさんはこう語っている。 「上品なモノ、というのはグループや派閥の中心で目立つことができます。そのためには特にフランス人女性の間では、ブランドの靴を買って履くことが有効な方法なのです。 ブランドの靴のおかげで、職場や社会の中での自分の価値を上げ、上のポジションへと連れて行ってくれる。他人から見て自分は上だと見られたい、そういう欲求が、ブランドの靴への欲求につながっているのです」 つまり「ブランドの靴」こそが、女性にとって自分を目立たせてくれるもの、自信をもたせるもの、として必要不可欠なものなのだ。 こうなると、靴なしでは自信をもって生きて行けない、と思う女性がいるのも理解ができる。高価な靴を買い求める欲求は、普段の生活をおびやかすほどに中毒性があり、「新しい靴を買わなければ!」という強迫に迫られて消費がやめられない病となってしまう。 衝動買いは何度も繰り返してしまう危険性がある精神科医のデイビッドさんによると、若い女性たちがブランド靴などの消費がやめられない中毒症状のことは「メデューサ」(ギリシャ神話に登場する、蛇の髪を持つ女王)と呼ばれているという。 「この中毒の問題は、痛みを後から感じてしまうということです。例えば、私の患者の中には、後先を考えもせず反射的に買ってしまう人もいます。このせいで、離婚した際、親権を失った女性もいます。この衝動買いは人の人生において非常に不安定な要素かつ、何度も繰り返してしまうという危険性があります」 この中毒性の怖いところは「良いことがあったからご褒美に1足」「ストレスが溜まっているから発散のために1足」と、いつまでたっても高価な靴を買い続けてしまうことにある。こうして、膨大な消費が日常生活に支障をきたしていく。 靴好きは日本でも女性ならよくあることかもしれないが、日常生活に支障をきたすまで消費がやめられない人は、一度精神科に訪れることも検討した方がよいかもしれない。
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