「BeautiQ」代表・植村絵里さん 28歳で起業し、現在、クイックエステ「BeautiQ」を経営する植村絵里さん。経営者として仕事に向き合う植村さんが、ブログ『美肌の教科書』で、ご自身の離婚について語った文章「私の離婚の理由」がネットで反響を呼びました。現代社会において、女性に求められる仕事と、出産や育児などのライフワークバランスが論議を呼んでいますが、植村さんは、起業、結婚・離婚を経験し、何を学び、感じたのでしょうか。「仕事」と「女性らしい生き方」についてお話を伺いました。 女子大生が「女性の働き方」を学ぶベビーシッター事業――植村さんが起業されたのは、いくつのときでしたか? 植村絵里(以下、植村):28歳の頃、ベビーシッターの事業を始めました。女子大生をベビーシッターとして派遣する事業だったのですが、それを始めたのは、これから社会に出て、子供を育てる「未来のお母さん」が体力と時間を提供し、「今のお母さん」をサポートしながら、経験と知恵を教えてもらう。循環する女性のためのプラットフォームを作るのが目的でした。女子大生が、働く女性のロールモデルを見て「自分の理想とする生き方を発見する」ということに挑戦したんです。 ベビーシッターをしてくれた女子大生は、働く女性に触れて、徐々に顔つきが変わりました。自分の将来を具体的に考えるようになったんですね。でも、いざ就職活動の時期になったら「やっぱり自信がない」と言い出したんです。人間の行動の基盤となるのは自信です。女の人にとって、簡単に自信が持てるようになるには、まずは外見だと思ったんです。外見と内面は両輪のようなもので、どちらも回り続ける必要がある。内面は自分しか変えることはできないけれども、外見は他の人でも変えられる。外見に自信がついて、自分自身にOKが出せれば、次の一歩を踏み出すことができるんじゃないかと思ったんです。 私は、女性の生き方、ストレスを含めた今の状態が現れるのは肌だと思っています。肌を触って美しくすることで、内面にもアプローチできるんじゃないかと考えました。それで「時間がかかる」「値段が高い」高級エステではなくて、みんなが簡単にアクセスできるクイックエステを始めたんです。 仕事と結婚は両立するものだと思っていた――ご結婚されたのはいつ頃ですか? 植村:起業と同時期です。その頃は当然のように、「結婚」と「仕事」を両立させることができると思っていました。でも「当然」じゃないんですよね。人って甘えられる環境にいると、どんなに自分に厳しい人でも甘えが出るのかもしれません。今、振り返ると、養ってもらいながら、仕事も充実させたいなんて甘かったと思います。 例えば、私の場合は家賃を旦那さんが払ってくれていたんですね。家事は半々で分担していたんですが、日々の外食費や旅行のお金は彼が出してくれていたんです。男の人はプライドがあるから、向こうも「半分出してよ」とは言えない。「奥さんを養いたい」というほどじゃないけれど、男なら出せる範囲で出したいと思ったんだと思います。 ――結婚していたら、自然とそうなりますよね。 植村:でもね、最初は感謝していても、いつかそれが心のどこかで「当たり前」と思ってしまう。その気持ちが相手には精神的依存に見えてきて、重く感じてしまったのかもしれません。「こんなつもりじゃなかった」と。女性はね、「じゃあ先に言ってよ」と思うけれど、そういうことじゃない。もっと配慮してほしかったんだと思います。 ――「男性が養ってくれるのは当たり前」では難しいと。 植村:母親たちの若い頃だったら、「男というものは、結婚したら全部を抱える気持ちでやるんだ」と考えるのでしょうが、今は男性もそう育てられていませんよね。だから、女性は始めから意識しておくべきものだったんじゃないかと思います。これからの時代、女の人が、仕事しながら結婚する場合、それが1つの考え方かなと思いました。 「セックスレス」について、考えたこと――それが離婚された原因の1つだったんですね。 植村:そうですね。それから、初めての起業で、もちろん始めから上手く行くわけではなかったし、こちらも新婚生活どころではなかった。毎晩、泣いていた時期もありましたし、今、考えると、隣にいつもそういう人がいるのは辛いですよね。相手は結婚に夢を抱いていた人ではなかったけれども「こんなはずじゃなかった」という思いはあったと思います。 それから、もう1つ原因があって。ほぼセックスレスだったんです。いろんな理由があったと思いますが、私が精神的なダメージを受けていた時期があったり、仕事が忙しすぎたり、まともに男と女として抱けないっていうのもあったのかな。男性の方がセンシティブですしね。 もともと相手は「子供は欲しくない」と言っていたんです。私はいつかは産みたいと思っていた。相手も、そのうち「欲しい」と言ってくれるんじゃないかと期待していたんです。でも、人はそんなに変わらない。期待するというのは、相手の負担にもなったのかもしれません。 「男女平等」ではなく、役割分担して補い合える関係に――セックスレスの問題に悩む女性は多いと思います。 植村:私は女性の立場しか分からないけれど、今になって考えれば、女の人ができることはたくさんあるはず。男性も女性も、外はバチバチ仕事してストレスを抱えてる。それでも家の中では、動物の本質として、触られることで自分が必要とされていて、相手から愛されていると感じると思うんです。最後の行為までいかなかったとしてもね。 女性の優しさは人を癒すものだと思うので、女性が「母性の伝え方」を理解していれば、よりよい男女関係、夫婦関係が築けると思うんですよ。それで来年から、女性の愛や優しさで目の前の人を包み込む「WarmHands」という名前のハンドケアの事業をはじめます。女性の本来の役割に気づき、力を最大化するスキンシップの第一歩として、このハンドケアを広めていきたいと思っています。 ――現代は、女性にも男性と同じ社会的な役割を求められることもありますよね。 植村:女の人がポジションとして男と平等であるというのは、短期的に見たら女性が仕事を頑張る理由になるかもしれない。仕事をしていくことは、人としての成長にもつながるから重要なんだけれど、女性は男性に比べて、どうやっても体力がないし、男性と同じように働くのはムリですよね。体力がない分、女性は「母性」「愛」「ぬくもり」「優しさ」を与えたらいいと思うんです。 「私は女、あなたは男、2人とも仕事していて対等でしょ」ではなく、女の人が持ってる優しさや母性を男性に与えることで、補い合えると思うんです。役割分担を明確化した方がいい。女性も、母性や優しさをどう取り扱っていけばいいのかわからないなら、学ばないといけないのかなと思います。 >>【後編につづく】「誰かの妊娠を喜べる人になりなさい」 働く女性の妊娠観について女性経営者が母から学んだこと
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