今月明らかになった上海の食肉工場の期限切れの肉の使用と、ずさんな管理体制は、日本の消費者に衝撃をもたらしました。このような食品にまつわる事件や事故が起きるたびに「食の安全」が叫ばれることも珍しいことではなくなっています。 しかも今回は、マクドナルドやファミリーマートといった私たちにも身近なお店で提供されていたということで、対岸の火事として、のんきに構えていられないと、さらに危機感が煽られました。 実際、今回の事件をきっかけにして中国バッシングに走ったり、声高に改善要求をしている人も大勢います。しかし、本当に「中国産」を問題視したり批判するだけで大丈夫でしょうか? 単価の安い中国産食品は日本にとって不可欠な存在中国からの食料品輸入額は2006年に9,300億円を突破しました。その後、食品事故が相次いだために一時、その額を減らしていましたが、現在ではほぼ同等の水準まで輸入額も回復しています。1990年は2,300億円ほどであったことを考えれば、現在の中国との結びつきがいかに強いものになってきているかがわかるでしょう。両国間の関係がどうであろうとも、単価の安い中国産食品は日本にとってもはや不可欠な存在となっているのです。 その背景には、安い食品を必要としている層が、国内に多数いることがあげられます。経済的に余裕のある人ならいざしらず、誰もが有機栽培食品や高価な国産品だけで生活できるわけではありません。お金がなければファストフードでも激安食材店だろうと、一円でも安い食品に頼らざるを得ない、綺麗ごとでは済まない人も多いはずです。 現実問題として「お金がない」ときの自衛策について、貧困生活評論家でライターの和田虫象さんは次のように語っています。 「毎日口に入れるものですから、最初は自分の体で確かめるつもりで慣れていくしかないですね」 比較的安全に食材を購入するための5つのポイント和田さんはこれまでにフィールドワークとして海外を放浪する際に、食事をレストランなどでは極力とらずに各国のスーパーマーケットや市場で購入してきたそうです。その結果、安い食材は、保存状態が悪かったり、逆に保存料が多量に含まれているなど、健康に悪影響のある可能性が高いということが見えてきたといいます。そんな和田さんが現在、日本で比較的安全に食材を購入するためには次の5ポイントを心がけるべきだと指摘します。 1.薬品による脱色、着色は食品偽装のグレーゾーン 古くなった生鮮食品(いわゆる生もの)の葉の部分や根菜の表面を薬品につけるなどして、見た目をよくする技法があります。これはぱっと見だけでは判断ができないので根っこ部分が極端にヘタっていないかなど全体との鮮度のズレがないかを比較をすることを忘れないように。とはいえ、クレームを入れてお店から撤去されては元も子もないので基本的な食品偽装の手口を知ったうえで納得できる範囲なら購入することを推奨します。 2.格安量販店は翌日か当日に使いきらないとアウト 賞味期限ギリギリになると、在庫処分として販売されることもあるのですが、自分の店で売らずに転売して別の量販店で信じられない激安価格に設定されることがあります。しかも、ラベルを張り替えたりパッケージをし直したりする悪質な業者もいるので本当の期限がわからなくなってしまいがちです。そんなわけで保存がききそうなものであっても、なるべく早く使いきりましょう。 3.ひき肉、練り物系は再利用の可能性がある これも食品偽装としては基本的な手口です。スライス肉が売れ残ればひき肉にします。魚も同様にミンチにされます。そして、その加工日が商品ラベルに記載されてしまうこともがままありあます。とはいえ、腐っているわけではないので高熱で調理するなら購入してもいいでしょう。あくまで自己責任ですけど。 4.保存がきく缶詰や乾物ものでも日系の会社(合弁会社)の商品かどうかをチェック これはギャンブル的な要素です。中国産の食品でも加工している会社が日系企業の場合、生産管理も多少は信用できる……ような気がすると和田さんは言っています 5.そもそも安い商品に「掘り出し物」はないと心得る ここまでみてくれば言うまでもないですが、安くなる理由は必ずあります。それでも買うのであれば、相応の自己責任が発生します、ということです。 大半は問題なく消費されている中国産食品を上手に見極めていまや世界中で中国から輸入した食品抜きに食料事情は考えられません。そんな状況ですから、拒否するよりも自分なりのルールを設定して上手に付き合っていってはどうでしょう。こういっては元も子もありませんが、中国産食品による事故は、世界中に流通している量からすればほんの一部のことで、大半は問題なく消費されています。 過去に悲しいかな、大きな事件に発展したケースもありますが、上手に見極めればお財布にも優しく胃袋も満たしてくれる。安いことは決して悪いことばかりではありません。さすがに、どの選択をするのかはあなた次第と判断を委ねるところまでしか公の場では言えませんが、安易に敬遠するだけでなく自分のメリットになることも忘れないで欲しいのです。 正論だけでは空腹は満たせない。そんな経験がある人ならばわかっていただけるのではないかと思います。 |