一般的によく耳にする「女の子のほうが子育てがラク」説。男1人女2人の子どもを育ててきた筆者(女)の母も、弟を指して「あの子には苦労した」と苦笑します。でも、これって本当なのでしょうか? 「20数年にわたって子育ての相談を受けてきましたが、とくに多いのが『男の子って育てづらい!』といった相談です。一方で、女の子の子育てにも、男の子にはない特有の悩みがあります」と話すのは、『男の子の育て方』『女の子の育て方』(WAVE出版)などの著書がある教育カウンセラー・明治大学文学部教授の諸富祥彦さん。男の子、女の子それぞれで異なる「育て方」についてお聞きしました。 男の子の育て方:「しつけ期にお手伝いをさせること」で一人前に「結婚できて、就職できる男性に育てるには、0〜6歳までの乳幼児期の“ラブラブ期”+小学生時代の“しつけ期”における親の接し方がキーになります」と諸富さん。とくに乳幼児期に母親から惜しみない愛情を受けることで、男の子は「いざとなれば、お母さんがいる」と安心感を持つようになり、それを土台として挑戦できる、自信の持てる子どもになっていきます。 「ラブラブ期におけるお母さんと男の子の関係は『恋人感覚』でOKです。しつけは男の子がお母さんから『愛されている』と実感できる関係を崩さないで行ないましょう」 しつけ期においては「家事のお手伝い」をさせると、将来きちんと就職して働き、結婚できる「一人前の男」になれると諸富さん。これを裏付けるユニークなデータがあります。諸富さんの教え子が学生200人に対して行なった調査によると、就職活動に熱心な男子学生の間で見つかった共通点に「小学生時代に家事のお手伝いをした経験」があったのだとか。 「お手伝いを通して、仕事をしたり家族を持ったりするときに必要な『フットワーク力』『人の役に立つ喜び』『困難に立ち向かう力』の3つを身につけることができます。勉強やスポーツ、習い事以上に、4〜5歳頃までにお手伝いを習慣化させてください」 近年の脳科学では、男の子は仲間のために働くとき、脳の動きが活性化することがわかってきたともいいます。腰が重い男の子には、男の子脳に特有の『チーム意識』を活用して、父親に率先して家事に関わってもらうことで「チームの一員として僕にも果たす役割がある」と感じさせることが必要なのだとか。つまり、お互い助け合うのが当たり前といった社会性を育てることが大切なのです。 女の子の育て方:「ラブラブ夫婦でいること」が幸せな恋愛・結婚観醸成につながる「女の子に普通の幸せな結婚をしてもらい、幸せな人生を歩んでほしいと思うなら、乳幼児期のラブラブ期+思春期の“見守り期”における親の接し方がとても大切です」と諸富さん。乳幼児期は男の子と同様、子育ての土台ともいえる時期で、愛情をたっぷりと注ぐことで「お母さんから愛されている」と自己肯定感を持たせることにつながります。 一方、女の子の思春期は男の子のそれ以上にデリケートなので、親として慎重に関わりたいところ。とくに10歳頃から高校1年生頃にかけては、「他人よりも自分」でマイペース化する男の子とは逆に、女の子は「自分よりも他人」で周りの友だちとの人間関係に対して敏感になるのが特徴です。 「思春期に入ったら、あれこれ世話を焼いていた10歳くらいまでの子育てから、大幅にギア・チェンジする意識を持ちましょう。距離をとって見守りつつ、お子さんがSOSを出してきたら心を込めて話を聴くことが大事。『つらいときはいつでも助けになるよ』『何があっても大丈夫!』とおおらかな気持ちで構えてください」 親からするといじめなど思春期の問題は心配ですが、必要以上に子どもの問題に首を突っ込んで問題をより深刻にしてしまったり、逆に子どもの心を落ち込ませてしまったりすることのないようにしたいもの。 また、幸せな恋愛・結婚を願うなら「男性と自然に接する力」を身につけさせることも欠かせません。 「お父さんやおじいちゃん、お兄ちゃんなど、身近な異性とふれあう機会を持たせることで、奥手になったり男性へ幻想を抱くのを防ぐことができます。また、女の子はお母さんを見て恋愛・結婚観を学ぶもの。ラブラブな夫婦を見て育つと『結婚っていいものなんだな』と頭にインプットされるので、子どもの前でお父さんとイチャイチャしたり、キスやハグをしたり、夫婦げんかをしても仲直りする姿を見せるのは素晴らしいこと」 母親から注がれた愛情の量が、子どもの将来に大きく影響します。まずは男の子、女の子ともに乳幼児期に惜しみない愛情を注いで育てることからスタートしたいものですね。 |