金融庁が不妊治療のための保険商品を解禁金融庁は4月1日から不妊治療の費用を保障する保険商品を解禁すると発表しました。不妊治療にかかる費用は130万円以上、なかには1000万円を超える場合も。すでに不妊治療をしているカップル、これからしなくてはならないカップルには嬉しいニュースです。 今の日本では、どのくらいのカップルが不妊なのでしょう? よく目にするのは、「6組に1組」という数字ですが、他にも「10組に1組」「7組に1組」「5組に1組」など、いろいろな数字が出てきます。 いったいどれが本当なのでしょう? ネットで検索すると1番ヒットする「6組に1組」は、2010年6月に行われた「第14回出生動向基本調査」がもとになっているようです。そのデータを見てみると、不妊の「検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)」と答えた夫婦が全体で16.4%。およそ6組に1組の計算になります。 また、同じ調査では「流産を経験した夫婦」の割合も16.1%で、およそ6組に1組。ちなみに、5年ごとに行われているこの調査では、前回(2005年)は13.4%で「7組に1組」、前々回(2000年)は12.7%で「8組に1人」となっているので、不妊のカップルは年々増えているといえます。 ただ、気をつけたいのは、これらの数字が「不妊症と診断された夫婦の割合」を示しているとは限らないということ。 この調査は「不妊の検査や治療を受けた夫婦の数」にすぎず、その検査の結果、「不妊症と診断された夫婦の数」まではわからないのです。 不妊症率、世界平均9%に対して日本は16%そもそも「不妊症」とは、どう定義されているのでしょう? 特に病気をもたない男女が一定期間、避妊をせずにセックスをしても妊娠しない場合を、一般に「不妊症」と呼びます。そして、この「一定期間」について日本産婦人科学会は「1年」としています。気をつけたいのは、先の調査がこのような基準を踏まえたものではない点です。 次に日本以外の国における不妊の数も見てみましょう。 過去の世界規模の調査をまとめた2007年の報告書によれば、時代や国によってバラツキはあるものの、不妊症の比率の平均は約9%。調査の詳細が示されていないので一概にはいえませんが、これに比べると日本の16%という数字はかなり高いのです。 原因として考えられるのはやはり晩婚化の傾向。2015年の調査では女性の平均初婚年齢は29.4歳。日本は世界で32番目に初婚年齢が高い国なのです。女性の社会進出が進む、イギリスやドイツの初婚年齢は30歳を超えています。もっとも妊娠しやすい時期が20歳前後なので、晩婚化して子どもを産む時期が遅れれば必然的に不妊症の比率は高くなると考えられます。 先ほど不妊症を定義するときに「一定期間」妊娠しなかった場合と書きましたが、実はこの不妊症と診断できる期間も、年齢によって変わります。高齢になるほど、不妊期間が短くてもその後に自然妊娠できる可能性が低くなるので、日本よりも高齢になってからの出産を考えるカップルの多いアメリカでは35歳以上の女性には「半年」で不妊検査を受けることを推奨しているそうです。 フランスでは体外受精は自己負担なししかしながら先ほどの「出生動向基本調査」によると、意外なことに20歳?29歳で「現在不妊治療中」と回答した割合は他の年代よりも高いのです。またこの年代は「現在(不妊を)心配している」と答えた割合ももっとも高い。初婚年齢に近づき、初めての出産を前に不妊に対する意識が高まっているとも考えられますが、不妊の原因は必ずしも加齢ではありません。仕事のなどのストレスが生殖機能に影響を与えている可能性もあります。 また、残念ながら日本の不妊症の調査では、「妻」の年齢しか公開されていません。もちろん、男性の生殖能力も加齢によって低下しますし、男性側に不妊の原因がある場合もあります。1998年のWHO(世界保健機関)の発表によれば不妊の原因が男性のみにある場合は24%で、女性のみにある場合は41%。女性だけの問題ではないのです。 日本では不妊治療は公的保険の対象外。一方、スペインでは不妊治療は国の保険の対象内で、男女そろって43歳まで検査や治療を受けることができますし、フランスでも女性が42歳になるまで自己負担なしで体外受精を受けられます。日本にも各自治体が費用の何割かを助成してくれる制度はあるものの、回数や所得に制限があったり、全体の費用のほんの一部にすぎなかったりと課題が残ります。 今回、不妊治療に関する保険商品が解禁されたのは大きな一歩ですが、日本はまだまだ不妊への理解が乏しいと言えるかもしれません。
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