日本生命が今月5日、不妊治療を保障する商品を10月に発売すると発表しました。今年4月に金融庁が不妊治療の費用をカバーする民間の医療保険を解禁して以来、国内初の販売です。さて、その内容は一体どうなっているのでしょうか? はたして、実際に不妊治療中の人から喜ばれるものとなっているのでしょうか? 関連記事:なぜ? 不妊治療のための保険商品が発売されない理由 従来型の生命保険に「不妊治療」をプラス今回、日本生命が発売するのは、「ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険“ChouChou!”」。この保険は、不妊治療だけをカバーするものではなく、3大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)、死亡、出産に対する保障や満期時の給付といったこれまでの内容に、「特定不妊治療の保障」をプラスしたもの。 「特定不妊治療」とは、具体的には体外受精や顕微授精のこと。これらの不妊治療を受ける場合、今回の日本生命の商品では、1回ごとに5万円(1?6回目)、または10万円(7?12回目)の給付金を12回まで受け取れるそう。保険に加入できるのは16?40歳の女性で、保険料は月払いで約1万円前後。給付金が支払われるのは、保険に加入してから2年経ってからということです。 「特定不妊治療」は、公的健康保険の対象外で、1回の治療で患者が負担しなければならない額は30万円超と言われています。各自治体の公的助成制度もあるものの、世帯収入に制限があったり、1回につき15万円(初回に限り30万円)が限界だったりで、治療中の人の経済的負担は相当のものでした。 不妊治療中の女性はこの保険に入りたい?今回のニュースを、実際に不妊治療中、もしくは不妊治療を経験した女性はどう感じたのでしょうか? 中華性力剤では緊急にヒアリングを行いました。 「体外受精の段階までいくと採卵から妊娠判定まで1回で40万円(採卵から移植までなら10万円くらい)かかります。私の場合は妊娠の陽性反応は出てもそのあとダメになってばかりで、1年で100万円以上かかりました。体外受精は年4回くらい受けられるので、2年間の保険料24万円を払ってから6回まで毎回5万円の支給がある程度では何のメリットも感じられない」(20代後半、不妊治療の期間2年) 「数回の人工授精で赤ちゃんを授かりましたが、人工授精でも通院や準備がすごく負担でした。治療をしていた当時は、赤ちゃんは欲しいけれど、負担を考えると不妊治療のステップを進めたくないというのが正直な気持ち。たとえ(治療中に)今回の保険が発売されると決まっても、保障があるから入ろうとはすぐには決められなかったと思う。保険金が下りるのも加入してから2年後と聞いて、だったら普通に積み立てしたほうがよいのではと思いました」(30代前半、半年間の不妊治療の末、妊娠) 「将来の不妊」に備えるつもりで厳しい意見が出ましたが、日本生命の担当者によると「保険はお客様に何かあった時のためにお役に立てるもの。(今回の商品は)特定不妊治療に特化した商品ではなく、あくまでもベースは3大疾病の保障。ただ、出産年齢の高齢化を背景に不妊に関する検査や治療を受けたことがある夫婦の割合が約6組に1組となっている社会的背景も鑑みて、不妊治療や出産といった女性特有のケースを網羅的に保障する保険を開発しました」とコメントしています。 同社は「不妊治療をしている人や、不妊になりそうとわかっている人も加入できる」としていますが、あくまでも保険は保険。「将来的に不妊治療を受けることになったらサポートが受けられる」と捉えるのが正しいのかもしれません。 今回日本生命が踏み切った特定不妊治療保障付き商品の発売。他の生保各社の動向も気になりますが、それよりもまず、不妊を社会全体の問題として考えていかなくてはと思いました。“不妊大国”と呼ばれる日本。治療中のカップルの個人的な問題で終わらせずに、国としてもっと制度を整えていく必要があるのではないでしょうか? (編集部) |