「不妊検査、一応受けておこうかな……」そう考えている人も少なくない今の時代、意外に知らない「不妊検査」の基本について出産ジャーナリストの河合蘭(かわい・らん)さんに教えていただきました。知らないと、ムダな検査に時間とお金を費やすことになってしまうかも。 「不妊検査」で何がわかる?避妊をやめてもなかなか妊娠しない場合は、一般に産婦人科で「不妊検査」を受けるよう勧められます。でも、この「不妊検査」は実は不妊症であるかどうかを調べる検査ではないのです。「不妊症」とは、ある特定の身体の状態をさす言葉ではなく、単に「妊娠を試みている男女が1年間妊娠しないこと」と学会で定義された用語の一つにすぎません。 では「不妊検査」で何がわかるのか? それは「妊娠しにくい理由」です。 さらに「妊娠しにくい理由」は、「不妊検査」でわかるものと、わからないものがあります。例えば、出産まで無事に辿りつける卵子の割合が多いか少ないかまでわかる検査はありません。35歳以上で妊娠したいと望んでいる女性の場合、「妊娠しにくい理由」は主に年齢にあるので、「不妊検査」を受けても理由が見つからないカップルが近年では増えています。 卵管の検査は激痛が当たり前?もちろん、なかには「不妊検査」で「妊娠しにくい理由」がわかるケースもあります。たとえば、卵管が詰まっている場合。 卵管が詰まっていると、精子と卵子は出会えないので、妊娠しやすい期間にセックスをするタイミング療法や人工授精は意味がないという結論になります。この場合、最短コースの治療は体外受精です。 卵管の詰まりを調べる検査を「卵管造影検査」と言いますが、ネット上では「痛い」という声がよく見られて敬遠されがち。卵管造影検査とは、造影剤を子宮から注入してレントゲンで調べる検査で、造影剤が卵管の先まで行けば卵管は通っていることになります。 「卵管の検査」は本当にそんなに痛いのか? 「痛いから受けない」という女性もいますが、実際に調べてみると「痛くなかった」という人も少なくありません。私が取材した数名の医師によると、「卵管に大きな圧力がかからないようにしたり、レントゲンの代わりに超音波検査を使ったりする場合、ひどい痛みを訴える患者さんはほとんどいない」のだそう。医師によって、痛みの度合いが大きく異なる検査といえそうです。 基礎体温表は持参しなくてもいい妊娠にまつわる検査には必須と思われている「基礎体温表」ですが、これは絶対必要というわけではないのです。 近年の「不妊検査」では、ホルモンバランスの乱れや排卵の有無は血液検査などで調べることができます。そうした検査の方が、基礎体温よりも正確なので、医師の中には「基礎体温表は必要ない」と言い切る人もいるほどです。 閉経までの残り時間がわかる「AMH検査」最近、注目されている新しい検査に、卵子の「数」を推測する「AMH(抗ミューラー管ホルモン)検査」があります。この検査は血液検査によって、小さな卵胞が出しているホルモンの血中濃度を測り、そこから卵胞の数を推測するもの。 次のグラフを見てください。これはAMH検査の草分けである浅田レディースクリニックで計測された2077名のデータですが、かなりばらつきがあり、特に30代は個人差が大きいことがわかります。 卵巣の卵胞は日々減っていきますが、高年齢でも残りの個数が多い人は、体外受精を受けた時に卵子がたくさん採れる傾向があり、出産できる卵子があることが期待できます。 ただし、卵子一つずつについて、出産につながるかどうかを調べる方法は今のところありません。やっぱり年齢が一番正確な目安であると言われています。最近何かと話題のAMHですが、「検査値=妊娠力」ではないのです。 ただ、年齢がそれほど高くなくても、AMHの値が低いことはあります。AMHの値が低いとは、卵子が少なく、卵子がなくなる日が迫っているということ。つまり、早発閉経のサインです。この検査を受けることで、年齢が高くても余裕があるか、年齢が低くても急いだ方がいいか、そのあたりの状況が見えてきます。 検査のメニューは医師によってかなり違うこのように「不妊検査」といっても、それは特定の一つの検査をさすわけではなく、血液検査、卵管造影検査、問診、子宮や卵巣を見る超音波検査、そして男性の精液検査など、実にさまざまな検査の組み合わせからなっているのです。さらに言えば、どの検査をメニューに入れるかは、医師の方針や施設の設備によって少しずつ違います。最新の検査も網羅したメニュー構成になっている場合もあれば、昔からある必要最低限の検査のみという場合も。検査料は高くなりますが、高精度の最新の検査を受けた方が、不妊治療の効率はよくなります。 「不妊検査」を考えている女性から時々、聞かれるのは「生理周期のどのタイミングで受ければいいの?」ということ。妊娠に関わるホルモンの分泌は生理周期に合わせて刻々と変化するので、検査のために月に数回通院する必要があります。周期のそれぞれの時期に何かしらできる検査があるので、いつから通い始めてもOKです。 |