女性が月経のために失う血液量は月平均で45ml、一方1mlの出血で失われる鉄は0.5mgですので、毎月20mg以上の鉄分が失われます。また、1回の妊娠で必要とされる鉄の量は出産時の出血、胎児への鉄の補給などのため1000mgと言われています。
成人女性の場合には月経による出血で1日平均2mg、さらに妊娠中の女性は1日平均で3mgの鉄が必要となり、それぞれ1日20mg、30mgの鉄を摂取しないと鉄の不足状態となります。鉄の不足分は体に蓄えられている貯蔵鉄(通常約1000mg)から供給されますが、貯蔵鉄が枯渇すると鉄欠乏性貧血が現れてきます。
貯蔵鉄が枯渇してくると血清鉄が次第に低下し、この状態が数カ月続くと小球性低色素性貧血(いわゆる「血が薄い」)となります。さらに進行して組織鉄が減少すると、貧血以外のさまざまな臨床症状が現れてきます。日本赤十字社の調査では、女性の12・7%が鉄欠乏性貧血であるといわれています。
貧血の一般の症状である顔色が悪い、動悸[どうき]、息切れ、疲れやすい、耳鳴り、集中力の低下、寒さに敏感などのほか、鉄欠乏症が高度になると、爪がもろく欠けやすくなり、そり返って中央部がくぼんだスプーン状になる(スプーン状爪)こともあります。 |